ジャズのアドリブがどうしてもできない件
前回の「クラシックピアノの先生がジャズピアノに挑戦する話②」の続きです。
楽しくレッスンを受けながらも、次第に心の中に「これで良いのだろうか」という疑問が沸き起こり、次第に大きくなっていくのを意識せざるを得ませんでした。
目次
ジャズピアノを習っているのにアドリブができない !
何と言っても一番の悩みは、一向にアドリブができるようにならないことです。
レッスンに手ぶらで行きたくはないし、それでいてアドリブができないためパクったソロを楽譜に書く。
センスが良いと褒めて下さるのでまた調子にのってせっせと書く。
書いてもすぐには覚えられないしその場で自分で作ることもできないため、書いた楽譜を見ながら弾く。
いつの間にか常に楽譜を見ながら弾いている自分に気づく。
‥あれ?コレじゃ今までやってきたことと変わらなくない? ってか同じじじゃん!
目の前の楽譜が、偉大な作曲家のものから自分でひねり出した怪しい書きソロになっただけで、私は相も変わらず楽譜を見なければ何も弾けない状態から脱却できなくなっていたのです。
習い始めて一年数ヶ月経ったあたりでした。
もちろん、まずは先生に相談です。
「クラシック出身者が楽譜への依存度が高いのは仕方のないこと。きっとそのうちできるようになりますから、頑張って色々なミュージシャンの演奏をたくさん聴いて、少しずつ取り入れていって下さい」
と助言下さると同時に「ジャズピアノ頻出フレーズ集」といった楽譜や書籍を紹介して下さいました。
フレーズというのは、音楽における「言葉」と言えば良いでしょうか。
英語学習における「単語」のようなものです。ボキャブラリー、あるいは慣用句とも言えます。
英語学習者が単語帳を作って読んだり書いたりして覚えるように、ジャズの学習者はフレーズ集を何度も弾いて、色々な調に移調(調整を変えること。♯や♭の付かないハ長調を♯がひとつ付いたト長調に変えて演奏する)して、また何度も弾いて覚えていくのです。
毎回の宿題と課題でアップアップ
さっそく取り掛かりました。
「フレーズ集」から好きなメロディのものを選び、12の調に移し変えて練習です。
やったことのある方はお分かり頂けると思うのですが、この練習は
恐ろしいほどに時間がかかります。
私は不器用な人間ですし、慣れていなかったせいもありますが、ひとつのフレーズを12調に移調して練習し終わるのに平気で1時間半とか2時間かかりました。
上記の練習はあくまで自分用のオプションでありまして、毎回のレッスンごとに出る宿題の量が減らされる訳ではありません。
和音の押さえ方の雛形練習、音階の練習は、上記とは別に常に12調で練習していかなければなりませんし、毎回の課題曲もあります。
曲はどんどん難しいものにグレードアップし、初心者用の曲の簡単なコード進行のようにはいかなくなっていきます。
その都度、例によってソロをひねり出さねばなりません。
もちろん仕事は普通にありますので普段通りのクラシック曲の練習も欠かせません。
この頃、1日に3〜4時間はピアノに向かっていたと思います。仕事とは別にです。
また主婦でもありますので当然家事は私の仕事です。(と家族は思っています)。
大人ばかりの家族4人分の朝夕食を毎日作るのも私、買い物も掃除も洗濯も全て、私以外にやる人間はいません。
また、たまに実家から呼び出しがかかります。実家にはピアノがありませんので練習も勉強もできません。
色々な事案が重なって宿題をやりきれずにレッスンに行くと、先生は諦めたようなお顔で「主婦の方は色々ありますから仕方ないですよね」とおっしゃるのですが、私はなぜかとても申し訳ない気持ちになって「次回のレッスンではこんなことがないようにせねば」とさらに頑張ってしまい、さらに疲弊するという悪循環に陥っていました。
私の勝手な独り相撲であり、努力の空回りという状態でした。
ジャズの教室を変えることに
これだけ自分なりに努力しても、相変わらずアドリブはできるようにはなりません。
先生にまた相談しても、「頑張って耳コピとフレーズ練習を」とおっしゃるのみです。
ほとほと困っていたそんなある時、以前にジャズギターを学んでいて、今はロックやポップスのギター教室を営む先生にお話を聞く機会がありました。なんでもバークリー音楽大学(ボストンにあるジャズの名門大学)で勉強された方に師事していたそうです。
アドリブがどうしてもできるようにならないとこぼすと、
「楽譜オンリーでやってきたクラシック出身者が、ジャズの巨匠の演奏を耳コピだけでできるようになるのは難しいから、その先生が弾いてくださる音を録音させてもらって徹底的にコピーしては?」
と教えてくれました。
え?バークリーではレッスンの録音がオッケーなのですか?
と聞くと、
「全ての指導者がオッケーかはわからないが、自分の先生は逆に『必ず録音するようおっしゃっていた』」と。
「そもそも録音しないとレッスンで言われたこと片っ端から忘れちゃわないですか?」と逆に聞かれました。
ハイ忘れますとも。先生のお宅を出て歩き出せばあっという間にどんどん忘れていきますね。
ってか忘れちゃうのは私だけじゃなかったのね〜と少し安心。
さっそく次のレッスンから録音させて頂こうと決意。
iPhoneの充電が満タンになっているのを確かめて先生にお願いしました。
レッスンでの新曲紹介の時に弾いて下さる先生の模範演奏のソロはホレボレするほど素敵です。
録音すればこれらがいつでも聴ける! 何度も弾いて自分のモノにできるかも!
光明が見えた気がしていたのですが、
結果はNG。レッスンの録音も、手だけの動画撮影も不可とのことでした。
「私のコピーになってしまうからそれはおやめ下さい」とのことです。
諦めるしかありませんでした。
人間とは勝手なもので、あれほど頑張ろう、この歳であっても努力してできるようになろう、と沸き立っていた意欲が、この一件で急速に減退して行くのをどうすることもできませんでした。
習い始めてから2年近くが経過していたでしょうか。
相変わらず楽譜がなければ何一つ弾くことのできない私。
目の前の譜面通りにしか動かない指。
レッスンは相変わらずで、毎日3時間以上ピアノに向かっても、何一つ状況は変わることはありません。
やはり無理だったのだ、こんなに不器用な人間が50台も後半になってジャズピアノなど身の程知らずにもほどがあったんだ。
そう考えて、いつどうやって退会を切り出そうかと考えていた矢先、
またしてもネットの海の中から情報がもたらされました。
首都圏の、全く別の教室の広告です。
そこは規模が大きく、むしろ教室というより学校といった趣。
ピアノだけでなく、ベースやドラム、サックスやその他の楽器をも習うことができるようです。
生徒さんの数も多いようで、上手になれば仲間同士でバンドを組んで演奏したりして楽しそうです。
単細胞な私は、またしても「コレだ! 」と感じました(どんだけ単純なのか‥)
もう一度だけ、自分にチャンスを与えたい。
ここで諦めてしまったら、今までの努力が無に帰してしまう。
今の先生には十二分にお世話になったけれど、たまたま私には指導方法が合わなかっただけかもしれない。
もう少し、チャレンジしてみよう。
子供の頃からの願望「楽譜にとらわれず自由に演奏する力を得たい」に向けて、もう一回だけやってみよう。
そう思って、その教室にメールを送りました。
また一からやり直しです。
さて、その後どうなったでしょうか?
それは、これからのお楽しみです。
少しずつ、書いて参りたいと思います。
お読み頂いてありがとうございます。
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