ピアノコンクールに低年齢で出場することのメリットとデメリット

 

お子さんがピアノを習い始めて2年目、やっとピアノに少し慣れて、曲らしい曲が弾けるようになってきた今日この頃。

ピアノの先生に「〇〇ピアノコンクール出場」を勧められた — そんな保護者の方も多いのではないでしょうか。

 

年齢が低い時期のピアノコンクール出場については賛否様々な意見があります。

 

この記事では、

幼児〜小学校低学年の時期にピアノコンクール に出場することの意義と、ある種の「弊害」。

メリットとデメリットについてお伝えして参ります。

何かの参考になれば幸いです。

 

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ピアノコンクール(低年齢対象) の盛況

ステージ上のグランドピアノ

 

幼児から小学校低学年のお子さんたちのコンクール熱は高まる一方です。

首都圏で開催される、低年齢の子どもを対象としたコンクールは以下のように数多くあります。

 

・ピティナ・ピアノコンペティション

・かながわ音楽コンクール

・グレンツェンピアノコンクール

・ショパン国際コンクールin ASIA

・全日本ジュニアクラシック音楽コンクール

・ベーテン音楽コンクール

・ブルグミュラーコンクール

・ヤマハジュニアピアノコンクール

・ヨコハマジュニアピアノコンクール

・スガナミピアノコンクール

 

‥‥まだまだ沢山ありますがキリがないのでこの辺で。

首都圏だけでもこの盛況ぶり。

地方都市で開かれるものも含めると、それこそ数えきれないほどの低年齢対象ピアノコンクール が存在することがわかります。

 

多くのコンクールは年齢ごとに区分分けされた複数の課題曲を弾きこなす必要があります。

コンクールによっては、年齢に比して難しい課題曲が課され、参加のハードルが非常に高いものがあります。

逆に、年齢相当というか、比較的平易な課題曲が弾ければ参加可能なものもあり、バラエティーに富んでいます。

 

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ピアノコンクールに低年齢から出場することのメリット

グランドピアノ

 

幼稚園児や小学校低学年の児童が、ピアノコンクール に挑戦することで得られるものは何でしょうか。

以下のような事柄が考えられます。

 

・ピアノの練習を積み重ねることで努力することの尊さを学ぶ

・高名な審査員を含む、大勢の人の前でピアノを演奏するという貴重な経験を積むことができる

・ピアノの演奏力が格段にアップする

・克己心(自分に打ち勝つ力)を養うことができる

・難しい曲に挑戦し、弾ききることで自信につながる

・もし受賞できれば自分の経歴としてアピールすることができる

・他の参加者の優れた演奏を聴くことで良い刺激を得ることができる

 

他にもありそうです。

小さな子どもとはいえ、1人のピアニストとして舞台に立ち、難しい曲を演奏してそれを審査員に評価してもらう。

その緊張感たるや。

子どもの成長にとって大いにプラスになることでしょう。

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低年齢でのピアノコンクール出場のデメリット

逆に、低年齢の子どもがピアノコンクール に出場することのデメリットとしてどんな事柄が考えられるでしょうか。

普通にピアノを習うことに比べてお金がかかる

鍵盤上のお金

 

手元に資料のあるピアノコンクールの予選参加費は以下の通りです。


・ピティナ・ピアノコンペティション ソロA2級

7000〜9000円(会員割引などあり)

・かながわ音楽コンクール ユースピアノ部門

10000円

・ブルグミュラーコンクール 幼児

7500円

・ヨコハマジュニアピアノコンクール  A部門

9900円

(全て未就学児・2019年)


これだけならば普通の発表会と変わりませんが、その他に課題曲の楽譜、それなりの衣装と靴の購入が必要

さらにコンクールによってはアドバイスレッスンを受けたり、実際の会場に近い雰囲気を味合わせるべく広めの会場を借りて練習することがあります。

またそれらの場所に行くための交通費もかかります。

同じ曲を長く練習するために譜読みの力が養いにくい

楽譜の冒頭

 

個人的に心配なのはこの件。

コンクールに出場するためには、半年近くも同じ曲を練習するのはザラです。

課題曲を練習しながら普段のテキストを進められれば良いのですが、必ずしも幼い参加者全員に可能なワザではありません。

一部の器用なお子さんを除くと、読譜力、基本的なソルフェージュの力、楽典の知識などは二の次になりがち。

音楽の総合力を学ぶという点についてはやや不利になると言わざるを得ません。

年齢が低いほど発達・成長の度合いに個人差があるため正確な実力をはかりにくい

子どもの成長の仕方には個人差があります。

比較的早い時期に体が大きくなる子、手先が器用な子、文字や音符などへの興味を示す子。

その逆に、小学校高学年や中学生になってから様々な力が伸びてくる子。

色々なタイプの子どもがいます。

また、単純に4月生まれと3月生まれの子では1年近くの成長のズレがあります。

 

こういった発達時期の違いは、子どもの年齢が低いほど大きく、本人の努力でどうにかなるものでもありません。

ピアノコンクール で入賞できた、できなかった、という結果の差は、もしかすると発達度合いの差からくるものだった可能性があるのです。

 

身体や手先の発達の早い子はそれだけで有利といえます。

逆に小柄な子、手先の発達がゆっくりめな子はそれだけで不利となります。

これでは、年齢が低い間は特に、正確なピアノの実力を測るのは難しいといえます。

審査基準があいまい

勝った、負けたで判定できるスポーツなどと違って、音楽やダンスなどは採点基準がどうしてもあいまいになりがちです。

 

まったくの私事ですが、私が趣味のフラ(ダンス)にハマってコンペティションに出場させて頂いた時に感じたことは。

「ジャッジによって天と地ほど評価に差がある」ということでした。

同じ曲を同じ場所で同じように審査しているのに、どうして人によってこれほど採点に差があるのかと真剣に考えたほどです。

正直、かなりジャッジの好みが反映されているように感じました。

 

「オバさんのフラダンスと一緒にされてもね〜(笑)」という声が聞こえてきそうですが、大切なのはことの本質を見据えることです。

ピアノコンクールの採点基準は、フィギュアスケートのように細かく公表されている訳ではないので確かなことは言えません。

ただ、同じように「審査員の好み」が採点に影響する可能性を否定する材料もありません。

 

幼い時期の貴重な時間を捧げて努力を重ねたピアノの演奏の「優劣」が、もしも一部の大人の「好み」で判定されてしまうとしたら‥

それはやはり残念なことと言わざるを得ません。

幼い子どもが「勝つためのピアノ」を弾く必要がある

競争のメダル

 

 

コンクールは、競争です。

競争ということは点数がついて順位が示され、勝者と敗者が出るということです。

出場することに意義がある、勝ち負けにはこだわらないという参加の仕方もあると思います。

でも、多くの参加者はできれば「勝ちたい」「少しでも上の順位を取りたい」との思いから練習を重ねているのではないでしょうか。

 

「勝つ」ためには、人より自分が上の位置にいなければなりません。

そのためには、人に差をつけなければなりません。

他人よりも、自分が少しでも上の場所に行けるように、自分の強さをアピールし、審査員に印象づけねばなりません。

ピアノを武器として戦うということです。

 

まだ年端もいかない幼児が、「勝つために」「人と戦うために」ピアノを弾く。

その姿に危ういものを感じてしまうのは私だけでしょうか。

幼い時期は、もっと音楽の楽しさを味わうだけでも良いのでは。

 

私は、「勝てるピアノを弾く」のは、純粋に音楽を楽しむ姿勢とは少し違うのではないかと感じています。

そして、可愛い盛りの幼稚園児たちの「勝つためのピアノの弾き方」には、個人的にどうしても痛々しさを感じてしまっています。

ピアノコンクール出場は年齢が低いほどメリットよりデメリットが上回る

ピアノを弾く子供の両手

 

私なりの結論を申し上げます。

子どものピアノコンクール 出場は、未就園児、小学校低学年など年齢が低いほどにメリットよりもデメリットが上回ります

コンクール出場で得られるものと失うものを秤にかけた時に、失うものがより大きいとの認識です。

 

そして、失われる何よりも貴重な資源とは

私は「時間」であると考えます。

 

ただの時間ではありません。

就学前の幼稚園の一時期、小学校に入ったばかりの時期。

これらは、二度と戻りません。

幼稚園生には幼稚園生の間にしかできない様々な体験があります。

小学校低学年の子どもたちも同様です。

 

この時期、最も大切なことは「友達と遊ぶこと」「色々な経験を積むこと」だと私は考えています。

まだ宿題なども多くない時期、何も考えず夢中になって友達と遊ぶことは、低学年までの間にしかできません。

その貴重な時間を、毎日何時間も1人でピアノの前に座って過ごすことが、果たしてその子の幸せにつながるのかどうか。

 

「‥は?

うちの子はコンクールではしっかり上位入賞してますけど、毎日お友達とたっぷり遊んで、ピアノの練習は1時間もしないで終わりますが何か?」

というお子さんもいることでしょう。

ですが、それは一般的な話とは違います。

 

幼稚園や小学校に休まず通い、友達と毎日たっぷり遊んで様々な体験を積み、なおかつピアノの練習をサクッと終わらせてコンクールでは上位入賞できる、そんなお子さんならばどんどん挑戦すると良いと思います。

高い能力を持った子どもには、彼らにふさわしい活躍の場があるというもの。

でも、そうでない「普通のお子さん」の方がずっと数は多いのです。

 

子どもはあっという間に大きくなっていきます。

幼稚園児には幼稚園児の、小学校1年生には1年生の、体験すべきことはたくさんあります。

そして失われた時間は二度と戻りません。

ピアノコンクール に挑戦することはいくつになってもできますが、幼稚園年長児の毎日は一生で一度きりです

この貴重な時間をピアノ漬けになって過ごすことのないように気を配ってあげて下さい。

子どものピアノコンクール出場・メリットとデメリットのまとめ

ピアノを弾く少女

まとめてみましょう。

 

就学前の幼児および、小学校低学年の児童がピアノコンクール に出場することのメリットは以下の通りです。


  • 努力することの大切さ・尊さを学ぶことができる
  • 他ではなかなか得られない貴重な経験を積むことができる
  • ピアノの演奏力が格段にアップする
  • 克己心を養うことができる
  • 難しい曲に挑戦し、弾ききることで自信につながる
  • もし受賞できれば自分の経歴としてアピールすることができる
  • 優れた演奏を多く聴くことで良い刺激を得ることができる

 

就学前幼児、及び小学校低学年児童がピアノコンクール に出場することのデメリットは以下の通りです。


  • 費用がかかる
  • 譜読み、楽典、ソルフェージュなどの総合的な音楽の力を養うことが後回しになりがち
  • 年齢が低いうちは発達に個人差があり、正確なピアノの実力を測りにくい
  • 音楽にはに点数が付け難く、審査基準があいまいになりやすい
  • 幼いうちから「人に勝つ」ことを意識したピアノ演奏を意識せざるを得ない
  • 毎日何時間もピアノを練習することで、幼児期、小学校低学年の時期にふさわしい活動がしにくくなる

 

ピアノの先生に、お子さんのピアノコンクール出場を打診されたあなたへ。

もしもあなたのお子さんが、上に書いたような「普通の子ども」であったなら、コンクールへ向かって邁進を始める前に、少しだけ立ち止まって考えてみて下さい。

 

コンクール出場が、お子さんの成長につながるかどうか。

コンクールに出場することがお子さんの毎日にプラスになるかどうか。

コンクールに出場することで、ますます音楽が好きになれるかどうか。

 

誰よりもお子さんを愛しているあなただからこそできる、大切な選択です。

ぜひ、お子さんとよく話をして、ご家族でも話し合ってみて下さい。

お子さんの貴重な幼年時代が、楽しく充実した日々となりますよう祈っています。

 

お読み頂いてありがとうございます。

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