【J.S.バッハ】インヴェンション第1番の演奏のコツは?おすすめの弾き方を解説|版ごとの比較も
J.S.バッハ「インヴェンション」第1番の演奏のコツやおすすめの弾き方について解説します。
この記事でわかることは以下の通り。
- インヴェンション第1番の概要
- 演奏のコツ
- おすすめの弾き方
- 版による微妙な違い
一般的なピアノ学習者にとって無理のないテンポと弾き方、装飾音の入れ方などは、プロのピアニストの演奏とは違うハズ。
本記事の内容を、インヴェンションを学ぶ際のひとつの提案ととらえていただければ幸いです。
目次
インヴェンション第1番とは
概要
- 曲名:インヴェンション第1番 BWV 772(Inventio 1.)
- 拍子:4/4
- 小節数:22小節
- 調性の変化:ハ長調→ト長調→イ短調→(ヘ長調)→ハ長調
あまりにも有名なインヴェンション第1番。ピアノを習っていない人でも聞き覚えがあるのでは。
22小節と短いですが、J.S.バッハ作品への長い旅の始まりを象徴する偉大な曲です。
ピアノを愛する、すべての学習者に学んで頂きたいと思います。
【J.S.バッハ】インヴェンションとは?難しい理由|必ず弾くべきor弾かなくて良い?その判定方法
演奏のコツ
単純明快にして素朴な、誰もが知るインヴェンション第1番。
有名曲なので速いテンポで弾きがちですが、速すぎるとどうしても機械的な演奏になりがちです。
ハ長調のシンプルな曲調を生かして、落ち着いた速さで端正に弾きたいもの。
推奨テンポは、全音楽譜出版社『J.S.バッハ インヴェンション』解説者・市田儀一郎先生の提案通り♩=75前後です。
これくらいの速さなら2声のアンサンブルをきれいに響かすことができるでしょう。
インヴェンションの楽譜について
インヴェンションの楽譜は各社から出ていますが、当ブログでは全音楽譜出版社の市田儀一郎氏解説のものをおすすめしています。
また比較対象として以下の版を参考にしています。
- バッハインヴェンション 分析と演奏の手引き(ハンナ社)
- バッハ・インヴェンションとシンフォニア(カワイ出版)
- バッハ インヴェンションとシンフォニア 高木幸三校訂・解説(全音楽譜出版社)
インヴェンンションのおすすめ楽譜についての記事はこちら↓
バッハ インヴェンションの楽譜はどれがおすすめ?5冊を厳選!特徴と選び方を解説/一般学習者向け
インヴェンション第1番の弾き方
1〜6小節
✳︎本記事は「IMSLP ペトルッチ楽譜ライブラリー」のパブリック・ドメイン楽譜を使用しています。
弾き方のポイント
1〜6小節(7小節第1拍)、ト長調に転調するまでが最初のひとかたまり。(『第1提示部』と呼ぶ版もあります)。
この曲の主題(モチーフ)は、当然ながら冒頭右手の十六分音符「ドレミファレミドソ」です。
この8つの音を中心に、調を変えたり反転させたり拡大したりしながら曲を紡いでいきます。
よって、まずはこの音型を楽譜の中から探し出して弾き表していくことが何よりも大切。あなたはいくつ発見できますか?♪( ´▽`)
例えば1、2小節の左手のほか、3小節目右手1-2拍、3-4拍には反転して出てきています。
また5小節の左手1-2拍、右手3-4拍にもト長調に姿を変えて隠れていますね。
これらをひとつひとつ、ていねいに表現しながら弾いていきましょう。
先生によっては「インヴェンションの8分音符はすべてノンレガートで弾くように」と指導する人もいますが、市田版では推奨されません。
ただしカデンツ(終止形)は完結感を強調するためにノンレガートで弾くよう指示が。私もおすすめします。
装飾音符について
バロック作品では、装飾音符はとても大切です。
バッハにおけるトリルは、原則的にトリルが付いている音の上の隣接音から、拍の頭に合わせて入れます。
よって1、2、6小節右手のトリルは上の音から。
もちろん演奏困難のため雑になったりテンポが落ちたりするなら臨機応変に変えてしまいましょう(^_^)v
また5小節目右手2拍目のモルデントは、付いている音から下に引っ掛けるように弾きます。
7〜14小節
弾き方のポイント
7〜14小節(15小節第1拍)までが2番目のパート。ト長調で始まりイ短調に転調します。
主題が、左右の手で掛け合うように様々にかたちを変えて出てきます。
11〜12小節の左手16分音符の行列にも主題が隠れていますが、コレらをひとつひとつ強調して弾くかどうかは悩みどころ。
市田版、ハンナ版(分析と演奏の手引き)では推奨せず。高木版ではスラーで区切られていますので推奨ということに。
個人的に、全部にアタックを付けて弾くのはちょっとクドいかもですσ(^_^;)
写真の市田版のように左手①の指使いで弾くと、自然にごく軽いアタックを得ることができます。この程度に留めておくのがおすすめ。
13〜14小節は盛り上がる箇所。やや強い音で弾くのが合います。イ短調のカデンツをよく感じて弾いてみて下さい。
装飾音符
市田版では9、10小節右手1拍目にはそれぞれモルデントとトリルがカッコ付きで添えられています。上記の他の版には見当たりません。
負担でなければツルっといれてしまって良いのでは。少しでも華やかになりますし(^○^)
15〜22小節
弾き方のポイント
最後のパート。15〜18小節は盛り上がった後いったん沈静するイメージで、控えめな音で優しく弾きましょう。
左右に出てくる二分音符は「弱くならないよう、充分にテヌートして」。
タイで結ばれた16分音符が、休符みたいになってしまわないようしっかりと感じてから次の主題を弾くようにしましょう。
イ短調からゆるやかに転調していく過程はとても美しいですね。2声の響きをよく味わって下さい。
いったんヘ長調の響きになった後、上行しながらハ長調に戻ります。
ここが当然一番盛り上がるところ。曲中一番高い「ド」の音を自分の耳でよく聴きましょう。同時に左手にあるテーマをしっかりと。
ラストはたっぷりとrit.(ゆっくり)して、堂々と曲を閉じます。
装飾音符
版によっては、最後の小節の和音を少しずつずらして弾くようアルペジオ記号(波型の垂直線)の指示があります。
このパブリック・ドメイン楽譜にも付いていますね。
市田版、カワイ出版、高木版はには無し。ハンナ社販には付いています。
高木先生は「『この曲の男性的な様式に反する』というブゾーニの見解もあり、用いない方が良い」とバッサリ。
ブゾーニ様がおっしゃるのだから確かにそんな気が致します(^_^)vので、私も無しを推奨します。
まとめ
バッハインヴェンション第1番の演奏のコツとおすすめの弾き方を、パートごとに分けて具体的にお伝えしました。
インヴェンションの演奏の仕方については、実際のところ多くの先生方のおっしゃっていることが一致していません。
弾き方も解釈の仕方も諸説あり過ぎて、正直どうすれば良いのか途方に暮れる人も多いのが現状。
そこで、ごく一般的なピアノ学習者の方々を念頭に、インヴェンション第1番を演奏する際に弾きやすいテンポや装飾音の入れ方などをご案内することを思い立ちました。
本記事でご案内したことは、読む人によっては必ずしも正しいとは感じられないかもしれません。
「私が習ったことと違う」「ココはむしろこう弾くべきなのでは?」「主題だけでなくこっちも大切なのでは?」など、色々なご意見があることでしょう。
私はごく普通の「街のピアノの先生」ですので、生徒たちもまたごくごく普通の子どもや大人です。
彼らにとっては学術的な見解とか見たことも聞いたこともない難しい専門用語など、目が滑って読む気が起こらないハズ。
なので、ごく普通のピアノ学習者の方が少しでもわかりやすいと感じられるよう、特に大切と思われることだけに的を絞ってご案内することにしました。
本記事によって、少しでも多くの方がバッハのインヴェンション に親しむことができたなら、とても嬉しいです。
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