「雨の日のふんすい(噴水)」を解説!難易度レベルと弾き方のコツ|イメージ通りに弾くには?
「雨の日のふんすい(噴水)」は、ギロック(Gillock, 1917〜1993)「こどものためのアルバム」に収められています。
題名のとおり、雨の降る中での噴水の様子を描写した曲で、水の動きを思わせる音の連続が印象的。
発表会で好んで演奏される人気曲のひとつです。
わずか43小説と短いながら、なかなか難しそうに聞こえるこの曲、難易度レベルは果たしてどれくらいでしょうか。
また、どうすればより魅力的に響かせることができるでしょうか。
解説とともに演奏のコツをお伝えして参ります!
目次
「雨の日のふんすい(噴水)」の難易度
難易度比較
初中級〜中級。
ブルグミュラー「貴婦人の乗馬」より難しく、湯山昭『お菓子の世界』の「バウムクーヘン」よりは易しいです。
湯山昭「バウムクーヘン」の記事はこちらから↓
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平吉毅州「チューリップのラインダンス」と同レベルと考えます。
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ピアノ曲を23段階にレベル分けした「ピティナ・ピアノ曲辞典」では、「こどものためのアルバム」は「応用4〜7」と幅のあるランク付け。
中で、「雨の日のふんすい」は、ギロック「こどものためのアルバム」の中では5本の指に入る程度には難しいでしょう。
演奏のポイント
- 16分音符の粒を揃える
- ひんぱんな両手の交差
- ダンパーペダルとソフトペダル両方の操作
- 情景に応じた音色のコントロール
「雨の日のふんすい」は水の流れや動きを表現する曲なので、全曲を通して16分音符を粒のそろった音で滑らかに弾く技術が求められます。
この曲は常に両手を交差させながら演奏することになります。
特に左手が右手を超えて高音域を弾くことが多いので、左右の音のバランスに気を配ることが重要。
また、以上の点に気を配りながら、右足でダンパーペダル、左足でソフトペダルを操作する必要があります。。
最も大切なのは、演奏者が自分なりの情景のイメージを持って弾くこと。
ただ楽譜をなぞるのではなく、音のかたまりを通してどのような光景を表現したいのかを考えて演奏すると良いでしょう。
弾けるようになる年齢
YouTubeには、この曲を巧みに弾きこなす低年齢の子供たちの動画がたくさんアップされています。
中には5〜6歳の、どう見ても学齢前のお子さんの姿も。
「雨の日のふんすい」の演奏には、前項のような複雑な技術や左右のペダル操作が求められます。
「できるだけ低年齢で難しい曲を弾く」のが昨今のピアノ教育の流行のようですが、正直「そんなに急がなくても‥」というのが私の意見。
できれば補助ペダルを使わなくても弾ける4年生以降なら安定した演奏ができますが、「それでは遅い!」とお考えの保護者も多いのかもしれませんね。
個人的な感覚では、小学校3年生で弾ければかなり「早い」方。
趣味としてピアノを習うなら、小学校のうちに弾ければ十分に「順調に上達している」と言えるでしょう。
「雨の日のふんすい(噴水)」の概要
- 曲名:雨の日のふんすい(Fountain in the Rain)
- 作曲者:ギロック(W.L.Gillock, 1917-1993)
- 収録:こどものためのアルバム(Album for children)
- 作品スタイル:近・現代小品
- 調性:ヘ長調
- 演奏時間:約1分40秒
「雨の日のふんすい」は、W.ギロックの「こどものためのアルバム」に収められています。
「こどものためのアルバム」は、初級〜中級レベルのピアノ学習者に欠かせない優れた作品集。
バロック、古典期、ロマン派、近・現代の四つの時代区分のスタイルで書かれた23曲から成り、多くの曲にはイメージ豊かな標題がつけられています。
「雨の日のふんすい」は、その高い演奏効果から発表会やコンクールの定番曲。
雨の中、様々に表情を変えながら絶え間なく揺れ動く水の流れを思わせる印象的な曲で、ラヴェルやドビュッシーの作曲技法を思わせる精緻な魅力に満ちています。
ギロック「こどものためのアルバム」は、ピアノ学習者が買ってソンはない楽譜の一つ。おすすめです。
YAMAHA「先生が選んだピアノ発表会名曲集④」にも収められています。
「雨の日のふんすい(噴水)」の弾き方解説
ヘ長調 4/4拍子, Gently flowing(静かに流れるように)
右手の絶え間ない16分音符のアルペジオの上に、左手のメロディラインが浮き上がるように響きながら雨の中の噴水の様子が描き出されます。
調性の変化や装飾音、テンポの自由な揺らぎなどを感じながら、様々に表情を変える噴水の様子をさわやかに表現して下さい。
1〜8小節
冒頭、♩=about(約)88と速さの指定があります。
それほど速い指定ではないので決してあわてず、右手の音の粒を揃えることに集中しましょう。
ソフトペダルはあらかじめ踏んでおきましょう。
ベース音「ド」の中に残りの音のかたまりが柔らかく響くように、そして全ての音が強くなりすぎないように気をつけます。
左手のメロディラインはportamento(ポルタメント)の指示が。
本来は弦楽器や声楽のための用語で、異なる音を滑らすように弾くようにとの指示ですが、ここではportato(ポルタート,ひとつひとつの音を切って弾く)の意味で使われています。
決して硬い音色にならないように、柔らかさを意識して。
5小節目からはベース音に5度の響きと装飾音が加わって音の厚みが増します。
9〜12小節
変イ長調〜ロ長調へと2小節ずつ転調。
急にあたりが明るくなったかのよう。「release soft pedal」、ソフトペダルから足を離します。
特に♯系であるロ長調への転調は、雨の中の光景にも少し光を感じさせます。
13〜16小節
さらに転調しながら1小節ずつ高い音域へと移っていきます。
14小節目からは左手のベース音にアクセントが付けられているのに注目。
楽譜に指示はありませんが、crescendo(クレッシェンド・だんだん強く)していきましょう。
曲の山場に向かっているのがわかるように弾くと良いです。
17〜23小節
”cadenza – like accellerating and growing louder”, 「カデンツァのように加速しながら強く」と英語での指示があります。
カデンツァとは、演奏者が自身の技術を示すために自由に演奏してよい部分。
噴水が一斉に噴き上がるように、やや抑えた音量から一気に強く、拍感にとらわれず加速していきます。
華麗にしてダイナミックな、この曲一番の聴かせどころ。速すぎるとせわしない印象になりもったいないので余裕をもって。
20〜21小説の”splashing downward” の部分は飛び散るしぶきを感じさせるように。音が下方に向かうので音量はやや抑えめに弾きます。
22小節から再びcrescendoして、23小節の二つの4分音符は十分に間をとると効果的。
24〜27小節
in time はもとの速さで。
1〜4小節と同じですが両手による装飾音が入り、かつ左手は1 オクターブ上がるのでかなり弾きにくい箇所です。
ここは、無理に拍に合わせようとしなくてもOK。
左手のテーマはfffとffです。キラキラした音の響きを自分の耳で聴きながら、全身を使って噴水の勢いを表現してみて下さい。
28〜35小節
calmly(落ち着いて・穏やかに)。急に水の勢いが弱まったようです。
32小節、少しだけ強く弾きますが音色は柔らかく。
33小節は1拍目左手の「ソ」をとても大切に、フェルマータに向かって速度を緩めていきます。
34〜35小節はソフトペダルを使っても良いと思います。とろけるように甘い感じの音色が欲しいところ。
36〜43小節
36〜38小節目で噴水が勢いを取り戻した後、38小節目でまた弱まったのがわかるように、充分にテンポを落とします。
40小節からはもとの速さで。
水が再び勢いよく湧き上がり、加速しながら最後の見せ場を形作ります。
42小節の4分音符後の給付は長めに取りましょう。
43小節の最終音は、噴水が終わったあとの水面のゆらぎをイメージすると良いと思います。
音の響きをよく聴きながら、余韻をもって曲を締めくくって下さい。
まとめ
ギロック作曲「こどものためのアルバム」から、1、2を争う人気曲である「雨の日のふんすい」についてお伝えしました。
聴き映えのする曲ですが、求められる要素も多く、イメージ通りに美しく弾くにはそれなりの努力が必要。
エチュード(練習曲)の要素もあり、練習しがいのある曲です。
ダンパーペダルに頼りすぎることなく、ひとつひとつの音を大切に、音型ごとに細かくおさらいしてみて下さい。
そして、ピアノの上に、あなただけの素敵な噴水を描き出してみて下さいね。
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