インヴェンション第11番の演奏のポイントは?おすすめの弾き方と版による違いを解説【J.S.バッハ】
「インヴェンション」第11番(J.S.バッハ作曲)の演奏のコツやおすすめの弾き方について解説します。
この記事でわかることは以下の通り。
- インヴェンション第11番の概要
- 演奏のポイント
- おすすめの弾き方
- 版による微妙な違い
一般的なピアノ学習者にとって無理のないテンポと弾き方、装飾音の入れ方などは、プロのピアニストの演奏とは違うハズ。
本記事の内容を、インヴェンションを学ぶ際のひとつの提案ととらえていただければ幸いです。
【J.S.バッハ】インヴェンションとは?難しい理由|必ず弾くべきor弾かなくて良い?その判定方法
目次
インヴェンション第11番とは
概要
- 曲名:インヴェンション第11番 BWV 782(Inventio 11)
- 拍子:4/4
- 小節数:23小節
- 調性の変化:ト短調→変ロ短調→ニ短調→へ長調→ハ短調→ト短調
インヴェンション第11番はとても重厚な作品。
常に流れる16分音符の主題と、上下行する半音階が絡み合って独特の情緒を生み出しています。
技術的に難しくはありませんが曲への理解と洞察力が求められます。
インヴェンションの練習順序についてのおすすめはこちらの記事からどうぞ↓
2声のインヴェンション 曲ごとの難易度は?全曲の練習順序と取り組み方のコツ
演奏のポイント
インヴェンション11番で特徴的なのは上下行する半音階進行。
バッハ作品では、特に下行形は苦悩や悲しみ、懺悔などを表していることが多いので、まずはそれを表現することが求められます。
逆に上行形では明るさが感じられるため、ほのかな希望や期待感などが感じられるように演奏できると良いでしょう。
テンポが遅いので装飾音符は必須。市田版では欠けていると思われる箇所も全て補い、多くの装飾で飾っています。
推奨テンポは4分音符=60/1分間となっていますがもっと遅くても大丈夫。
弱々しくならないよう、しっかりとした「足取り」を感じさせるように弾きたいものです。
楽譜
インヴェンションの楽譜は各社から出ていますが、当ブログでは全音楽譜出版社の市田義一郎氏解説のものをおすすめしています。
インヴェンンションのおすすめ楽譜についての記事はこちら↓
バッハ インヴェンションの楽譜はどれがおすすめ?5冊を厳選!特徴と選び方を解説/一般学習者向け
また比較対象として以下の版を参考にしています。
うちハンナ社「バッハインヴェンション 分析と演奏の手引き」は楽譜に直接装飾音やフレージングが書かれており、こちらもわかりやすくおすすめです。
- バッハインヴェンション 分析と演奏の手引き(ハンナ社)
- バッハ・インヴェンションとシンフォニア(カワイ出版)
- バッハ インヴェンションとシンフォニア 高木幸三校訂・解説(全音楽譜出版社)
- J.S.バッハ:2声のインヴェンション(ヘンレ版)
インヴェンション第11番の弾き方【J.S.バッハ】
第1提示部(1〜10小節)
1〜2小節左手のG-Fis-F-E-Es-D(ソ-ファ♯-ファ-ミ-ミ♭-レ)という、苦悩や受難を表す半音階下行を、まずは意識します。
右手の流れるような16分音符のテーマから浮き上がって聴こえるように、重くしっかりとした足取りで。
ハンナ社版、高木版で支持されている通り、8分音符はテヌートの付いたノン・レガートがおすすめ。
そして右手3〜4小節のD-Es-E-F-Fis-G(レ-ミ♭-ミ-ファ-ファ♯-ソ)は上記のフレーズの対になっています。
変ロ長調とニ短調、2つのカデンツを経て、再び7〜8小節の半音階下行形。その後、右手には多くの装飾音符が出てきます。
8小節4拍目ウラ、及び9小節2拍目ウラの8分音符に付いたトリルは、市田版とハンナ社版ではその前の4分音符に付けられたモルデントとタイで結ばれています。
一方高木版ではタイで結ばず弾き直す形。
動画では市田版方式で弾いていますが、打鍵し直した方が弾きやすければそれでも良いと考えます。
9小節右手3拍目ウラのA(ラ)には他のフレーズに倣ってモルデントを補充しましょう。
10小節右手に散りばめられた装飾音符のかたまりは聴かせどころ。fで華やかに飾って、しっかりとニ短調のカデンツをアピールします。
第2提示部(11〜23小節)
一瞬ヘ長調になり、ほのかに明るさを感じます。
13〜14小節左手の半音階進行上行形の後、15小節左手で演奏される主題をハ短調カデンツでしっかりと終了させましょう。
18小節3拍目から主題が主調(ト短調)に戻ってきます。
20小節からは左手に装飾音符の連続が。2拍目と4拍目のウラの8分音符には8、9小節にならってトリルを補充しましょう。
23小節には、高木版のみpoco allarg.(だんだんとゆっくりしながら強く)の指示があります。
他の版には指示がありませんがここは当然アラルガンドすべき。
最終音がモルデントで終わる、少々珍しい形です。最後のG(ソ)を自身の耳でよく聴きしっかりとフェルマータ。
さらにそのあとの終止線にもフェルマータがあるので、音が消えた後の余韻を味わってから曲を終えて下さい。
インヴェンション第11番まとめ
バッハインヴェンション第11番の概要と演奏のポイント、おすすめの弾き方を、パートごとに分けて具体的にお伝えしました。
インヴェンションの演奏の仕方については、実際のところ多くの先生方のおっしゃっていることが一致していません。
弾き方も解釈の仕方も諸説あり過ぎて、正直どうすれば良いのか途方に暮れる人も多いのが現状。
従って本記事でご案内したことは、読む人によっては必ずしも正しいとは感じられないかもしれません。
「私が習ったことと違う」「ココはむしろこう弾くべきなのでは?」「主題だけでなくこっちも大切なのでは?」など、色々なご意見があることでしょう。
本記事では、一般的なピアノ学習者の方々を念頭に、インヴェンションを演奏する際に弾きやすいテンポや装飾音の入れ方などをご案内する ことに留意。
少しでもわかりやすいと感じられるよう、特に大切と思われることだけに的を絞ってご案内することにしました。
本記事によって、少しでも多くの方がバッハのインヴェンション に親しむことができたなら、とても嬉しいです。
インヴェンション第1番、4番、8番、10番の弾き方は?こちらからどうぞ↓
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