インヴェンション第7番の演奏のポイントは?おすすめの弾き方と版による違いを解説【J.S.バッハ】
「インヴェンション」第7番(J.S.バッハ作曲)の演奏のコツやおすすめの弾き方について解説します。
この記事でわかることは以下の通り。
- インヴェンション第7番の概要
- 演奏のポイント
- おすすめの弾き方
- 版による微妙な違い
一般的なピアノ学習者にとって無理のないテンポと弾き方、装飾音の入れ方などは、プロのピアニストの演奏とは違うハズ。
本記事の内容を、インヴェンションを学ぶ際のひとつの提案ととらえていただければ幸いです。
【J.S.バッハ】インヴェンションとは?難しい理由|必ず弾くべきor弾かなくて良い?その判定方法
目次
インヴェンション第7番とは【J.S.バッハ】
概要
- 曲名:インヴェンション第7番 BWV 778(Inventio 7)
- 拍子:4/4
- 小節数:23小節
- 調性の変化:ホ短調→ト長調→ニ長調→ロ短調→ホ短調
インヴェンション第7番は、短くも表情豊かな主題が様々な位置で何度も模倣されながら曲を紡いでいく、歌謡性を持った曲。
テンポは遅めながらあちこちに華やかな装飾音が散りばめられ、全体の印象は優雅にして繊細なバロックの小品というイメージ。
憂愁を帯びて、それでいて適度な動きを持ち重苦しくはない。この曲の持つ複雑な性格を表現したいものです。
インヴェンションの練習順序についてのおすすめはこちらの記事からどうぞ↓
2声のインヴェンション 曲ごとの難易度は?全曲の練習順序と取り組み方のコツ
演奏のポイント
この曲の演奏には歌心と共に指先の的確なタッチが求められます。
まるで問いかけるような、印象的な主題と頻繁な転調。それを華麗な装飾音符が彩っていきます。
とはいえ「歌うこと」を意識しすぎるとテンポが揺れてしまい、バッハらしくありません。音が自然に流れるように弾けると素敵。
数多くの装飾音は、チェンバロやハープシコードの音色をイメージして硬質で透明感のある音色で弾きたいものです。
あくまでも飾りなので野太くならないように気をつけましょう。
市田版の推奨テンポは四分音符=65/1分間となっています。
表情豊かに歌うにはこれ以上速いテンポはおすすめしません。もっとゆっくりでも大丈夫です。
楽譜
インヴェンションの楽譜は各社から出ていますが、当ブログでは全音楽譜出版社の市田義一郎氏解説のものをおすすめしています。
インヴェンンションのおすすめ楽譜についての記事はこちら↓
バッハ インヴェンションの楽譜はどれがおすすめ?5冊を厳選!特徴と選び方を解説/一般学習者向け
また比較対象として以下の版を参考にしています。
- バッハインヴェンション 分析と演奏の手引き(ハンナ社)
- バッハ・インヴェンションとシンフォニア(カワイ出版)
- バッハ インヴェンションとシンフォニア 高木幸三校訂・解説(全音楽譜出版社)
- J.S.バッハ:2声のインヴェンション(ヘンレ版)
インヴェンション第7番の弾き方【J.S.バッハ】
第1提示部(1〜6小節)
1小節左手1拍目のモルデントは高木版とハンナ社版は譜面上に、カワイ出版には注釈でd(レ)音にシャープの指示が。
市田版ヘンレ版には何も指示がありませんがホ短調の導音なので上にならってdis(レ♯)とするのが一般的。右手4拍目も同様です。
オクターブ下降は深く沈み込むような重めのノンレガートで弾くと良さげ。
右手3拍目ウラの八分音符h(シ)を、次のフレーズの一部とするか独立させるかは悩みどころ。
高木版、ハンナ、カワイは独立したノンレガート、市田版は2小節頭の音までの「対位」としています。動画は市田版に倣いました。
2小節目4拍目の装飾音符は1拍に8音入れるのが標準ですが、チャラチャラと多めに入れると華やかになります。
以降、テーマを歌わせつつカデンツに向かいます。ト長調に転調するので明るく強さのある音で。
6小節目4拍目のトリルのついた付点8分音符と16分音符の組み合わせは、市田版では「当時の演奏習慣に従って」短い16分音符をさらに短くと指示が。
動画は指示に従っていますが一般的には高木版、ハンナ、カワイのように5連譜プラス16分音符2個と弾くのが多いようです。
第2提示部(7〜13小節)
7小節1拍目ウラから始まる第2提示部。盛り上がった後なのでひそやかに弾き始めると良いです。
右手3拍目から9小節頭まで続く長いトリルは、上隣接音e(ミ)から1拍あたり8音ずつ入れていきます。
ニ長調に着地したあとフレーズは自由に発展、ロ短調半終止。ヘンレ版のみ右手にトリルがあります。入れて弾くと綺麗。
ここからテーマのストレッタ(たたみかけるように音が重なっていく部分)。
緊迫感を出したい箇所なので、市田版12小節1拍目にのみ[ ]に入って付いているモルデントは要らないと思います。
今度はロ短調でしっかりと終止させます。
第3提示部(13〜23小節)
13小節3拍目から15小節2拍目までは、経過句として自由な動きが見られます。比較的安心して弾ける箇所(笑)です。
15小節3拍目からは、市田版以外の各社は左手に7、8小節右手と同じ長いトリルを指示。
市田版では、トリルは元はなかったとして、[ ]にて「入れても良い」と案内しています。ココはぜひ頑張って入れましょう。
18、19小節、左手16分音符の弾き方ですが、市田版ではオーバーラッピングと呼ばれる1以外の指の上を他の指が越える運指を提案。
他の版ではあまり歓迎されていない様子ですが、コレ慣れると意外と弾きやすいもの。バッハではOKとして良いかなと思います。
20小節からいよいよ終わりに向かって盛り上がっていきます。
多くの装飾音が提案されていますが気前よく全部入れてしまいましょう。とても華やかになります。
最後、23小節に2つのトリルの指示。
特に2拍目のトリルに関しては、この曲の最後に相応しく数を増やしたりターンさせたりなどもおすすめ。
充分ににrit.してラストのe(ミ)音を悠然と音を伸ばし、フェルマータの余韻を味わって下さい。
インヴェンション第7番 まとめ【J.S.バッハ】
バッハインヴェンション第7番の概要と演奏のポイント、おすすめの弾き方を、パートごとに分けて具体的にお伝えしました。
インヴェンションの演奏の仕方については、実際のところ多くの先生方のおっしゃっていることが一致していません。
弾き方も解釈の仕方も諸説あり過ぎて、正直どうすれば良いのか途方に暮れる人も多いのが現状。
従って本記事でご案内したことは、読む人によっては必ずしも正しいとは感じられないかもしれません。
「私が習ったことと違う」「ココはむしろこう弾くべきなのでは?」「主題だけでなくこっちも大切なのでは?」など、色々なご意見があることでしょう。
本記事では、一般的なピアノ学習者の方々を念頭に、インヴェンションを演奏する際に弾きやすいテンポや装飾音の入れ方などをご案内する ことに留意。
少しでもわかりやすいと感じられるよう、特に大切と思われることだけに的を絞ってご案内することにしました。
本記事によって、少しでも多くの方がバッハのインヴェンション に親しむことができたなら、とても嬉しいです。
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