インヴェンション第8番の弾き方は?演奏のポイントと版による微妙な違いを解説【J.S.バッハ】
J.S.バッハ「インヴェンション」第8番の演奏のコツやおすすめの弾き方について解説します。
この記事でわかることは以下の通り。
- インヴェンション第8番の概要
- 演奏のポイント
- おすすめの弾き方
- 版による微妙な違い
一般的なピアノ学習者にとって無理のないテンポと弾き方、装飾音の入れ方などは、プロのピアニストの演奏とは違うハズ。
本記事の内容を、インヴェンションを学ぶ際のひとつの提案ととらえていただければ幸いです。
【J.S.バッハ】インヴェンションとは?難しい理由|必ず弾くべきor弾かなくて良い?その判定方法
目次
インヴェンション第8番とは
概要
- 曲名:インヴェンション第8番 BWV 779(Inventio 8.)
- 拍子:3/4
- 小節数:34小節
- 調性の変化:ヘ長調→ハ長調→ト短調→変ロ長調→ヘ長調
インヴェンション第8番は、明るく活発な舞曲風カノンの特徴を持っています。
シンプルな曲調ですが1番、4番と比べると技術的に難しく、音の粒を揃えるための細かい練習が必要となると思われます。
インヴェンションの練習順序についてのおすすめはこちらの記事からどうぞ↓
2声のインヴェンション 曲ごとの難易度は?全曲の練習順序と取り組み方のコツ
演奏のポイント
勢い良く駆け上がり、すぐにスケールで下降する対象的なフレーズの組み合わせがこの曲の主題。
舞曲的性格を持つ作品ではありますが、むしろ徒競走のごとく競い合うスポーツのようでもありますσ(^_^;)
市田版の推奨テンポは四分音符=110となっていますが、もう少し勢いを出したい場合は四分音符=120前後がおすすめ。
音の粒を揃えて軽やかかつ爽快に弾きたいところです。
楽譜
インヴェンションの楽譜は各社から出ていますが、当ブログでは全音楽譜出版社の市田義一郎氏解説のものをおすすめしています。
インヴェンンションのおすすめ楽譜についての記事はこちら↓
バッハ インヴェンションの楽譜はどれがおすすめ?5冊を厳選!特徴と選び方を解説/一般学習者向け
また比較対象として以下の版を参考にしています。
- バッハインヴェンション 分析と演奏の手引き(ハンナ社)
- バッハ・インヴェンションとシンフォニア(カワイ出版)
- バッハ インヴェンションとシンフォニア 高木幸三校訂・解説(全音楽譜出版社)
インヴェンション第8番の弾き方
インヴェンション第8番は大きく3つのパートに分けられます。
基本的に8分音符は軽いスタッカートで、16分音符はレガートで弾きます。2箇所しかない4分音符はテヌートしましょう。
第1提示部(1〜11小節)
まず問題となるのが2小節1拍目の8分音符の処理。
駆け上がる8分音符のフレーズの一部とするか、次の16分音符の冒頭音とするかですが、市田版、高木版、カワイ版は前者。ハンナ版は後者。
動画は市田版に倣いました。分散和音を分解した形と解釈できますので当ブログではこちらを推奨します。
5、6小節の両手16分音符は小節の頭に軽くアクセントを。左右がバラバラになりやすいので特に左手を頑張って練習しましょう。
ハノンやエチュードのようなリズム練習が効果的です。
7、8小節頭のHはその前のフレーズの最終音。アクセントがつかないように気をつけたいもの。
9、10小節、8分音符後ろの16分音符の「アタック」は大切。意識して強調します。
10、11小節、属調(ハ長調)に転調する力強いカデンツ。しっかり終結させましょう。
第2提示部(12〜25小節)
次々に転調を繰り返しながら左右の手が掛け合いを演じる、難しいパートです。
まず15小節で突如ト短調に転調。ここでやや音量を落とすと良いです。
15、19〜25小節は、左右の16分音符の中に8分音符の対旋律が隠れています。
高木版では楽譜に指示あり。市田版では点線のスラーでそれを推奨。カワイではしっかりと解説で触れています。ハンナ版は記載なし。
これらを軽いスタッカートで浮き上がらせることができれば最高ですが、特に左手ではなかなか大変かも。
全部を表現しきれなくても、知っているだけで表現に幅が出てくるはずなので、ぜひ意識してみて下さい(^○^)
第3提示部(26〜34小節)
カデンツのないまま下属調(変ロ長調)で始まる第3提示部に突入。
27小節以降は4小節〜に対応しています。
30小節、主調であるヘ長調に回帰したことを左手の主題ではっきり宣言しましょう。
31小節からは9小節〜と同じく長めの終結区に入ります。
33小節、高木版では4番と同じくわざわざ(non rit.)の指示。スポーティに爽快に終わるのがお好きな先生のようです。他の版では記載なし。
動画では少しritしています。この方が「バッハを弾いた感」があって私は好きなのです♪(´ε` )
なお各版ともに、音そのものではなく終止線にフェルマータが付いています。
ニュアンスとしては、休符だけでは表現しきれない、曲の終結とその余韻を残すイメージを持つと良いと思います。
インヴェンション第8番 まとめ
バッハインヴェンション第8番の概要と演奏のポイント、おすすめの弾き方を、パートごとに分けて具体的にお伝えしました。
インヴェンションの演奏の仕方については、実際のところ多くの先生方のおっしゃっていることが一致していません。
弾き方も解釈の仕方も諸説あり過ぎて、正直どうすれば良いのか途方に暮れる人も多いのが現状。
従って本記事でご案内したことは、読む人によっては必ずしも正しいとは感じられないかもしれません。
「私が習ったことと違う」「ココはむしろこう弾くべきなのでは?」「主題だけでなくこっちも大切なのでは?」など、色々なご意見があることでしょう。
本記事では、一般的なピアノ学習者の方々を念頭に、インヴェンションを演奏する際に弾きやすいテンポや装飾音の入れ方などをご案内する ことに留意。
少しでもわかりやすいと感じられるよう、特に大切と思われることだけに的を絞ってご案内することにしました。
本記事によって、少しでも多くの方がバッハのインヴェンション に親しむことができたなら、とても嬉しいです。
インヴェンション第1番の弾き方は?こちらからどうぞ↓
【J.S.バッハ】インヴェンション第1番の演奏のコツは?おすすめの弾き方を解説|版ごとの比較も
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