バッハ インヴェンションの楽譜はどれがおすすめ?5冊を厳選!特徴と選び方を解説/一般学習者向け
J.S.バッハ「インヴェンション」の楽譜は各社から出ており、どれを使うのが良いか迷う人は多いです。
「色々な版があるけど、結局どれを使うのが良いのかな?」
「うちの生徒にとって使いやすいのはどれかしら?」
「何を決め手にすれば良いの?」
バッハインヴェンションの楽譜は、版によってかなり違いがあります。
初中級者でも取り組めるような親切設計の楽譜もあれば、専門的知識がないと使いこなせないようなものも。
この記事では、主に一般的な学習者にとって使いやすく、かつ信頼できる版はどれなのか?
おすすめの版とその理由、それぞれどんな人に向いているかなど、バッハインヴェンションの楽譜の選び方をご案内します。
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目次
インヴェンションの楽譜おすすめ5選
管理人の考える、一般学習者向け「使いやすく信頼性のある」バッハインヴェンションの楽譜ベスト5は以下の通りです。
- 全音楽譜出版社『J.S.バッハ インヴェンションとシンフォニア』(市田儀一郎編)
- ハンナ『バッハ インヴェンション 分析と演奏の手引き』
- カワイ出版『バッハ インヴェンションとシンフォニア』(解説付)
- ヘンレ社『バッハ 2声のインヴェンション』原典版(運指あり)
- 全音楽譜出版社『バッハ演奏へのアプローチ バッハインヴェンションとシンフォニア』(高木幸三校訂・解説)
なぜこれらを選んだのか?以下、ベスト1から1冊ずつ解説して参ります。
全音楽譜出版社/バッハ インヴェンションとシンフォニア(市田儀一郎編)
ベスト1はこちら。全音楽譜出版社『J.S.バッハ インヴェンションとシンフォニア』市田儀一郎編です。
特徴
本書は「原典版のみの使用による困難を緩和し、バッハに親しくアプローチしながら適正な解釈に到達できる実用版(解説より)」です。
はい難しいですねσ(^_^;)
何のことかと申しますと、バッハの勉強には作曲者が書いたそのままの楽譜である「原典版」を使うのがベストだけれども、それだけではちと難しい。
「もう少し学習者にとって使いやすく、それでいて信頼のおける正しい奏法を学べる楽譜を目指しました」ということですね。
バッハ研究に定評のある市田儀一郎先生による解説は非常に詳しいもの。
また、テーマの出だしやフレーズの区切り、カデンツ、転調など全てわかりやすく楽譜上に書いてあります。
テンポ設定も速すぎず無理のないもの。
全てにおいて学習者に寄り添った、バッハ インヴェンション楽譜の決定版と認定させて頂きます。
こんな人におすすめ
趣味でピアノを弾く人から専門的に学びたい人まで、あらゆるピアノ学習者におすすめできます。
ただし解説は専門用語がバンバン出てくる本格的なもの。
よく読み込み、楽譜と照らし合わせて学ぶ必要があるので面倒くさがりの人にはキビシイかも‥。
また全て日本語で書かれているので、使用者はほぼ100%日本人に限られます。
将来海外への留学などを考えている人は、やはりヘンレ版などの原典版の併用をおすすめします。
ハンナ社/バッハ インヴェンション 分析と演奏の手引き
特陵
インヴェンション15曲を文字通り「分析」し、「演奏の手引き」を楽譜上に書き込んだ校訂版。
「分析」を東京芸術大学教授の小鍛冶邦隆氏、「演奏の手引き」をピアニスト中井正子氏が担当しています。
それぞれの曲のすぐ次ページや前ページに解説があるので、いちいち楽譜の前や後ろの方のページをめくって探す手間がありません。
分析とともに装飾音符やフレーズの弾き方も全て楽譜に書き込んであるので非常に使いやすいのが特徴です。
こんな人におすすめ
「学習者に理解しやすいように」「初心者にわかりやすいように」楽譜上に全て書き込まれている親切設計。
どちらかというと、自分で学ぶよりは指示された通りに弾きたいバッハ初心者におすすめです。
とはいえ、そこはバッハ様のインヴェンション。
やはり解説は専門的で難しいので、独学向きというよりレッスンで使うことを前提とするのが適切です。
カワイ出版/バッハ インヴェンションとシンフォニア(解説付)
特徴
1981年1月に初版が発行されたロングセラーです。
楽曲解説の角倉一郎氏は、バッハを中心とする西洋音楽史や音楽理論研究の第一人者。また奏法解説はピアニストの金沢希伊子氏。
具体的な装飾音の弾き方が楽譜に書き込まれていて解説もわかりやすく、管理人は市田版を使うようになる前はこちらを使用していました。
特に運指が非常に弾き易い。こればかりは欧米人と手の大きさが違うので、日本人が使う前提では日本の楽譜の方が優れていると感じます。
技術的に難しい箇所の練習方法が紹介されているのもインヴェンションの楽譜には珍しいものです。
こんな人におすすめ
「趣味でピアノを習っており、いよいよインヴェンションを学ぶことになった」といった学習者におすすめ。
古い本なので「最新の研究」などは反映されていませんが、あくまでも趣味ということであれば色々悩まずこれ一冊で事足ります。
ただしフレーズの切れ目の指示やバッハ自身がつけた細かいスラーなどが楽譜上にないので自由度が高く、またテンポ設定はかなり速め。
これはもう少しゆっくりでも良いのでは‥σ(^_^;)
なおインヴェンションとシンフォニア、合わせて30曲が収録されながらお値段がお安いのも学習者に優しいところですね。
ヘンレ社/バッハ 2声のインヴェンション 原典版(運指あり)
特徴
あえてココでご紹介することもない、バッハ楽譜の決定版。
本格的にピアノを学びたい・学ばせたい学習者や先生方に熱く支持され、また世界中どこの国へ行ってもコレさえ携えていれば恥ずかしくないほどのブランド価値を誇ります。
原典版なので当然楽譜には何のヒントもありません。また解説に日本語はありません。
日本人学習者の存在をガン無視したような潔さこそが、この楽譜の最大の魅力なのかもしれません。
運指ありのものと無しのものがありますが、さすがに運指くらいは書いてあった方が使いやすいと思います。
こんな人におすすめ
コンクールなどを目指して本格的にピアノを学ぶ学習者・彼らが師事するハイレベルなレッスンを展開する先生方の御用達です。
逆に趣味で習う人には上項の理由でおすすめできません。
とはいえ、独特のブルーグレーの色合いの楽譜は「持っているとカッコいい」「ピアノがめちゃくちゃ上手そう」な雰囲気を醸し出せるのでモチベーションアップの効果は絶大です。
その場合はヘンレ版と、上の3冊のどれかを併用するのが賢い選択といえましょう。
なお定評のある原典版として赤い色の「ウィーン原典版」がありますが、それよりはこのヘンレ版がおすすめ。
「ウィーン原典版」は運指に非常にクセがあり、正直弾きにくいと感じました。
全音楽譜出版社/バッハ演奏へのアプローチ バッハインヴェンションとシンフォニア(高木幸三校訂・解説)
特徴
東京音楽学校(現東京芸術大学)器楽科卒業、横浜国立大学教育学部教授をつとめた故高木幸三氏(1924-2009)解説・校訂。
フレージングやアーティキュレーション、強弱記号など全て楽譜に書き込んであり、かつ運指が非常に細かく指定されています。
解説が平易な言葉で書かれていてとてもわかりやすく、曲想を説明する文章表現には文学的な香りが漂います。
曲ごとのイメージがわきやすく、さすが教育に携わった先生の手によるものと感じます。
面白いのは、巻末に版ごと・有名演奏者ごとのテンポ一覧表が掲載されていること。
表を参考にしながら、自分にとって適切なテンポを選ぶことができるというわけですね。
こんな人におすすめ
カワイ出版の校訂版よりさらに詳しいので、趣味で学ぶ人にはおすすめ。また運指が細かいので独学にも向いています。
装飾音符の弾き方も全て指定されていて、一人でも悩まずにコツコツ学ぶことができます。
バッハ インヴェンションの楽譜の選び方
さて、5冊の特徴と「おすすめしたい人」をお読み下さったあなた。
「んで結局、私にはどの版がぴったりなわけ?」とお思いではないでしょうか。
バッハ インヴェンションの楽譜の選び方は、ざっくりと以下のように考えて頂くと良いかと思います。
- バリバリのハイレベルピアノ教室に通う人は先生の指示に従う(選択肢無し)
- 割とハイレベルだけど先生が希望を取り入れて下さる場合はヘンレ版+全音の市田儀一郎版
- 趣味だけれど本格的にバッハを学びたい人は市田版+ハンナ『分析と演奏の手引き』
- 先生に「インヴェンションやりましょ。楽譜はどれでもいいわよ」などと言われた人はカワイ出版
- 独学やピアノ再開組でインヴェンションを練習しなおしたい人は高木版
なお、個人的にフレーズの解釈は市田儀一郎版が一番しっくりきます。また運指は市田版よりカワイ出版の方が弾きやすいと感じます。
また装飾音は好みで変化をつけたい部分。ハンナ社の「分析と演奏の手引き」は参考書として役立ちます。
一般ピアノ学習者は、市田版をベースとしながら、装飾音の弾き方や運指は「分析と演奏の手引き」を参考にするのがベストの使い方と考えます。
まとめ
一般的なピアノ学習者が、バッハインヴェンションを学ぶにあたり、数多ある版の中から使用する楽譜を選ぶとしたら?
どの楽譜が適当か、使いやすく信頼できる版はどれなのか。
その特徴とこんな人におすすめという基準、学習者のタイプごとの選び方をお伝えしました。
実は管理人、恥ずかしながらこれらの楽譜を全く使っていないのです。
バッハ インヴェンションを学んだのは今からもう半世紀近くも前のこと。
その頃日本のピアノ学習世界には、バッハインヴェンションの楽譜といえばヘンレ版などの輸入版のほかには春秋社版しかありませんでした。
当時の輸入版はあまりにも高価で、師事していた先生は(多分我が家の経済状況を慮って下さり)私に春秋社を指定されました。
その後音楽高校に入学して先生は変わりましたが、指定された平均律の楽譜はなぜかやはり春秋社のまま。
学友たちはみんな高価なヘンレ版を持っていて、とても眩しく感じたものです。♪( ´▽`)
現在、インヴェンションの楽譜を選ぶ際には実に様々の選択肢があります。
この記事が楽譜選びに悩むあなたの参考になればとても嬉しいです。
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