決してあきらめないで 〜腱鞘炎に悩んだ私からのアドバイス② 〜
引き続き、悩ましい腱鞘炎についての体験談です。
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目次
右手小指の付け根の腱鞘炎・痛みと戦う日々
ことの重大さに気づいたのは、安静を心がけてから2週間ばかり経ったころ。
違和感がいっこうに軽快せず、逆に違和感を通り越して痛みが出始めてからでした。
右手小指が鍵盤に触れるたびにズキッズキッと痛むようになってきたのです。
こうなるとスケール(音階)すら弾けません。右手で和音(重なった複数の音)を弾くこともできません。
日々生徒さんは通ってくるため、怪我をした事を話して小指に包帯を巻き、小指を使わないようにしてレッスンしました。
一番困ったのは発表会の講師演奏です。どうしたものかと悩みました。
ただ、いつも友人のお教室と合同で開催していたので、講師演奏も連弾と決まっていました。
幸い私はセコンド(連弾の第2奏者・低い音域を演奏する)を担当することが多くて慣れていたので、この時の「ルパン3世’ 78」も、観客席からよく見えないのを良いことに右手小指を一切使わないで良いように指づかいを変え、なんとか乗り切ることができました。
それにしても右手⑤指が一切使えないと言うのは不便なものです。
痛みはひきませんし、いつまでも包帯を巻いて教えるわけにもいきません。
当然、以前のように整形外科に通ってレーザーをあて、マッサージも受けました。
それが効き目がないとわかると鍼の施術も受けました。1軒目で効果がないと判断して2軒目へ。
これもあまり効果が感じられなくてほとほと困っていたところ、ワラにもすがる思いでたどり着いた某巨大掲示板の「腱鞘炎」スレッドに、
「整骨院に通ってストレッチの仕方を習い、毎日続けたところ95%回復した」
との記述を見つけ、早速近くの院に治療に通うことにしました。
腱鞘炎にはストレッチが効果的
結論から書きますと、これが一番効果がありました。
人気のある整骨院でしたので朝早くから並び、最初のうちはほぼ毎日施術を受けてから1日が始まると言うような生活です。
小指の腱鞘炎には腕の外側の筋肉をほぐしてからストレッチをするのが有効とのことで、施術を受けたあと家でじっくりと時間をかけてストレッチ。
例を挙げますと、
・「前へならえ」の状態で腕を左右にねじる
普段使わない腕の内側の筋肉を伸ばすことができます。
・座ったイスの座面に手のひらをつき、体重をかけないようにしながら腕と手首の角度をそっと90度近くまで曲げてゆっくり呼吸
・指先の向きを逆(背中側)に向けて同じようにそっと曲げて呼吸
曲げすぎは禁物です。やはり腕の内側の筋肉を伸ばすことができます。
なお、私には効果がありましたが、骨格や筋肉の様子は人によって違います。
また、あくまでも整骨院の指導を受けてのストレッチの結果です。
腱鞘炎でお悩みの方は、必ず整体師や整骨院の指導のもとで治療を行って頂きたいと思います。
さて、これらのストレッチを、多いときは日に何回も行いました。
あせらず時間をかけてじっくり行うのがよかったようです。
また、ピアノを弾く前と後には必ず行うようにしました。
すると、ストレッチを始めてから数週間で、痛みが軽減して行くのがわかりました。
あれほどズキズキした痛みがだんだんと和らぎ、ソナチネやツェルニーくらいなら弾けるようになってきました(それらすら弾けなかったんです!)
やがて、調子の良い時はほとんど気にせず弾けるまでに回復しました。
ただ、もう若くない時期にかかった腱鞘炎は残念ながら完治はしません。
もう今までのようには、ショパンやリストを弾くことは難しいと悟るのに時間はかかりませんでした。
「腱鞘炎になりやすい体質」は遺伝する
頭では理解していても、この事実を受け入れるのは正直努力がいりました。
かなりガッカリしてしまい、しばらくピアノから離れるように別の習い事などに精を出していたのはこの頃です。
それでも仕事は好きでしたし、教えるのに支障はないほどまでに回復したのは幸いでした。
やがて、自ら結論を導き出しました。
・通ってきてくれる生徒さんがいる限り教える仕事は続けよう
・ショパンやリストを華麗に弾けなくとも、知的なバッハを、優しいモーツァルトを弾けるようになろう
・腱鞘炎に悩むピアノ奏者の助けにわずかにでもなるよう、いつか何らかの形で自分の経験を世に伝えよう
このブログを立ち上げた理由の一つが上記の決意からくるものです。
私のように軽率な理由で手を傷めてしまうことのないように注意を喚起したいとの思いです。
そしてもう一つ。
ピアニストの腱鞘炎は、脱力ができていないとか、自分のテクニックの足りなさを無視した、無謀な練習をした時に起こると言われています。
ただそれだけではなく、腱鞘炎になりやすい体質というものもあるとのことです。
これは整骨院の院長に言われたことですが、日常生活の中でひねったり、ハサミで硬いものを切ったりといった、ものの弾みでかかってしまう人は一定数いて、
「そういった体質は遺伝する」とのことでした。
院長の言葉は私を勇気付けてくれました。
ネットの情報では、「ピアニストの腱鞘炎は、正しい演奏法を会得していない、脱力もできていない未熟な奏者がかかるもの」という記述が圧倒的だったからです。
実際そう考えて落ち込んでいる楽器奏者は多いのではないでしょうか。
でも遺伝であるなら、家族や親族にそんな体質の人がいるなどのように、ある程度予測することができます。
実際、私の母はバネ指(腱鞘炎の一種)で手術を繰り返し、妹はテニス肘でテニスを断念しています。
もしも近親者にそんな体質の人がいたら、ぜひピアノを弾く際はストレッチと指慣らしから練習を始めると良いと思います。
そして、過度な負担を指にかけないように常に気を配っていれば予防になるのではないでしょうか。
私がこの情報に触れることができたのは腱鞘炎にかかってしまったあとでした。
この文章を読んで下さった方が、一人でもあらかじめ予防を心がけて、腱鞘炎を回避して頂けるならこんな嬉しいことはありません。
いかがでしたでしょうか。
腱鞘炎に悩む方が一人でも減りますように。
また悩んだとしても、じっくりと治療して回復され、また旅を続けることができますように。
お読み頂いてありがとうございます。