学習マンガ「ショパン」各社版を現役ピアノ講師が徹底比較!おすすめはどれ?感想と口コミ評判
「学習マンガ」は、子供たちが歴史や文化を学ぶときにとても便利な教材のひとつです。
専門家が監修に当たっているので、内容も正確で本格的なもの。
短時間で読めてわかりやすく、大人が読んでも十分に楽しめるように編集されています。
「ショパン」は、「音楽家の伝記」ジャンルの学習マンガにおいては「モーツァルト」「ベートーヴェン」に匹敵する人気の人物。
大手出版社から数種類が発売されており、さてどれにしようかと迷う方も多いのではないでしょうか。
本記事では、マンガ好きのピアノ講師である管理人が、現時点で入手できる「ショパン」の学習マンガを徹底比較。
ベストと思われる一冊の紹介と共に、その他の作品についても感想及び口コミ評判折り混ぜてしっかり解説してみました。
どうか本記事をご参考に、一家に一冊、あなたのご家庭にぴったりの「ショパン」をお選び下さい
目次
学習マンガ「ショパン」おすすめはポプラ社版
2022年現在入手可能な学習マンガ「ショパン」は以下の4冊です。
- ポプラ社:コミック版世界の伝記「ショパン」
- 小学館版:学習漫画人物館「ショパン」
- 集英社版・学習漫画:世界の伝記「ショパン」
- ドレミ楽譜出版社:マンガ音楽家ストーリー4「ショパン」
以上4冊のうち、管理人の判定するところのベスト1は、ポプラ社「コミック版世界の伝記 ショパン」であるとの結論に達しました。
理由は下に述べます。
ただ、残り3冊が劣っているというわけでは全くありません。
子供の年齢やタイプによっては、むしろポプラ社のものよりふさわしいと思われる可能性も十分にあります。
以下、詳しくみて参りましょう。
なお学習マンガではないショパンの伝記をお探しの方はこちらの記事がおすすめです↓
ショパン伝記 小学生向き2冊の特徴を徹底比較|おすすめの子のタイプは?選択のポイント
ポプラ社「コミック版世界の伝記 ショパン」
- 監修:多田純一(京都市立芸術大学 日本伝統音楽研究センター客員研究員)
- 漫画:迎夏生
- 値段:1210円(税込み)
- 2022年1月第1刷
おすすめの理由
- 最も新しい「ショパン」の学習マンガ
- ショパンの生涯を時系列に沿って過不足なく記載
- 参考文献12冊を明記
- 巻末資料が豊富で年表も詳しい
- アニメ風味の現代的な絵柄
ポプラ社「コミック版世界の伝記 ショパン」は、2022年1月に出版されたばかりの新しい学習マンガ。
ショパン研究者である多田純一氏の監修のもと、ショパンと周囲の人々、当時の社会情勢を小学生にもわかりやすく伝えています。
ショパンの作品を理解するには、19世紀欧州の歴史を知ることがどうしても必要。詳しい巻末資料は理解の助けになることでしょう。
年表が非常に詳しく、作品名も時系列に沿って正確に書かれています。
また「基礎知識解説」では、「ショパン国際ピアノコンクール」についても説明があります。
2021年行われた第18回ショパンコンクールにおいて、2人の日本人ピアニスト、反田恭平氏と小林愛実氏が入賞したこともしっかりと記載が。
本書はこのように最も新しいショパン情報が盛り込まれ、大人が読んでも面白いように編集されています。
感想
特筆すべきは、なんといっても現代的で華やかな絵柄。
正装してピアノの前に座り、花をしょってカメラ目線な表紙のショパン氏は、まさにアニメ風・王子様系の貴公子そのもの。
アニメやゲームに慣れた現代の子供たちに違和感なく受け入れられること請け合いです。
また面白いマンガのお約束として、「魅力的なライバル」と「美しいヒロイン」の存在は欠かせないもの。
当時ショパンのライバルと目された悪友リストの派手な容姿はいかにもそれらしく、またバラをしょって現れる男装のジョルジュ・サンドの謎めいた存在感もバッチリ。
その他の登場人物も美男美女揃いで、マンガとしても物語としても楽しめます。
またショパンの生涯にはいくつかの重要なエピソードがありますが、本書ではそれらが過不足なく盛り込まれ、資料としても優れていると感じました。
マイナスポイント
- 新しすぎてまだ口コミ評判がない
- 紙質がよく少々値段が高い
ポプラ社「世界の伝記 ショパン」にはまだ口コミがありません。
また絵柄を生かすためか紙質が良く、他社のもの(990円)より値段が少々高くなっています。(1210円)
小学館版学習まんが人物館「ショパン」
- 監修:小坂裕子(音楽学者・ショパン研究家)
- まんが:市川能里
- 値段:990円(税込み)
- 2008年12月初版発行・2019年11月第6刷発行
特徴
- 妹の死や晩年のエピソードが省かれている
- 愛国者としてのショパンの描写が多い
- ジョルジュ・サンドに関する記述が少なめ
- 少年マンガのノリ
本書では、妹エミリアが14歳で亡くなったエピソードが省かれています。
またサンドが現れてからのショパンの記述が少なく、他社のものよりショパンへの彼女の影響が少ないように感じられる作り。
ショパンがロシアという敵国への闘志をあらわにする描写が多く見られ、全体的に、敵を倒そうと意気込む少年マンガのノリを感じます。
男の子にはむしろ本書がおすすめかもしれません。
感想
本書のまんがを担当した市川能里氏は「少年サンデー」でデビューしたとのこと。
絵柄やギャグのセンスに少年マンガっぽさを感じるわけですね。
ジョルジュ・サンドがとにかく美人(笑)。逆にリストはもう少しハンサムでも良かったのでは。(´∀`)
読後感はさっぱりとしていて、ショパンの生涯の過酷さや悲劇性などは感じにくいと思われます。
それでも祖国を愛するポーランド人としてのショパンの姿を余すことなく伝えている点で、福耳は個人的に本書を高く評価しています。
特にポロネーズ変イ長調「英雄」Op.53の誕生に関する描写は感動的。
確かにこのとき、ショパンには祖国を解放する英雄の姿が見えていたのかもしれませんね。
マイナスポイント
- 重要エピソードの省略
- ショパンの容姿が肖像画と大きく異なる
- 当時の政治情勢に関する記述・資料が少ない
妹の死のほかの重要エピソードといえば、晩年サンドと破局した後、スコットランド人のスターリング姉妹と共に英国に渡り苦労したこと。
この辺りがきれいさっぱり省かれているので、それを知る読者には物足りないかも。
また親しみやすくて可愛らしい絵柄のせいか、ショパンの容姿が残された肖像画と大きく異なり、イメージに今ひとつ合いません。
ここはもう少しショパンのキャラ造形に貴族的なエレガンスが欲しかったところです。
口コミ評判
Amazonのレビューより口コミ評判を拾ってみました。
「ピアノを習っている娘に購入しましたが、マンガなので夢中で読んでました。」(2012年)
「祖国の現状を憂えながら、パリで作曲活動に励んだショパンでしたが、
魂の表現者としてのショパンについて、少年少女向きに著したもの(漫画版)です。〜中略〜pianoを愛する幾多の少年少女におすすめな1冊です。」(2018年)
「ショパン、モーツァルト、ベートーヴェン、どれもわかりやすかったです。どの本も短時間で読めるので3冊一気に読んでそれぞれの主人公をちゃんと覚えることができました。軽くよめる本と言うかアニメなので本嫌いな子でもストレスなく読めてしまいました。」(2022年)
集英社版・学習漫画「ショパン」
- 監修:笠間春子(東京芸術大学名誉教授)
- 漫画:千明初美
- 値段:990円(税込み)
- 1996年7月第1刷発行・2021年10月第15刷発行
特徴と感想
- ショパンにまつわるエピソードを過不足なく網羅
- イメージ通りのショパン像
- 「やさしいお母さん」的なジョルジュ・サンド像
- 小学校低学年にも安心して読ませられる内容
1996年(平成8年)に初版が発行され、昨年までに15刷を重ねるロングセラー。
ショパンの短くも苛烈な生涯を時系列に沿って正確に描写していて、本書を読めばショパンに関する十分な知識を得ることができます。
ショパンのキャラ設定や繊細な容姿などもイメージぴったり。
またジョルジュ・サンドはふっくらとして、割烹着が似合いそうなやさしいお母さんという感じ。
彼女との関係性も、家庭的な暖かさや献身を強く意識させる記述がなされ、小学校低学年の子供たちにも安心して読んでもらえる内容です。
学習マンガとしての評価はゆるぎなく、これからも版を重ねていくと思われます。
マイナスポイント
- 参考文献の記載がない
- サンドとの破局部分の改変
- 絵柄が古い印象
本書には参考文献の記載がありません。東京芸術大学名誉教授による監修ということで、権威性としては十分との判断と推察します。
またサンドとの破局は、本来彼女の手紙によってもたらされたのですが、この部分が少々(かなり)変えられています。
どちらかというとサンドに同情的な記述となっているようで、ここはもう少し史実に即した描写が欲しいところ。
それ以外には欠点の見つけにくい本書ですが、マンガ好きとしてあえて難点を挙げるとすると、失礼ながら古くさいともいえる絵柄が気になります。
「よい子の世界名作童話風」とでもいえばいいのか、なんとも「昭和からアップデートされていない」感が漂っていますσ(^_^;)
初版が出版されたのが平成6年なので、集英社としてはまだまだ「学習マンガとはこのようなもの」という認識だったのでしょうか。
令和の子供たちの興味を引くには、もう少しアニメ風の作画に変えるなどの工夫があっても良いのではと感じました。
口コミ評判
「〜ショパンのことをざっくり知りたかったので購入してみました。ねらいは大当たり!短時間でおおかたの事を知ることが出来ましたし、
子供達にもこれなら薦められます。」(2010年)
「発表会で初めてショパンの曲を弾く娘にクリスマスプレゼントの一つとして用意しました。4年生になると時代背景などを理解するのに良いのか、食いつきがよかったです。漫画を否定する人もいますが、本人がもっと知りたくなったら次の段階を用意しようと思います。」(2017年)
ドレミ楽譜出版社 マンガ音楽家ストーリー「ショパン」
- 解説:芦塚陽二(作曲家)
- 作画:岸田恋
- 制作:株式会社ファミリーソフト
- 値段:990円(税込み)
- 2002年初版発行・2019年2月第13刷発行
特徴と感想
- 学習マンガらしくない
- ショパンを扱った物語として興味深く読める
- やや大人向き
ドレミ楽譜出版社の「マンガ音楽家ストーリー」シリーズは、「学習マンガらしくなさ」が特徴です。
本書はショパンの生涯を題材としたストーリーマンガであり、専門家の詳しい監修や参考文献の記載などはなし。
巻末にショパンの年譜はありますが1ページのみであり、資料として使うには不向き。
構成がドラマチックで、ショパンの生涯とともにサンドとの関係を主軸としたラブストーリーとして楽しむにはぴったりです。
冒頭、のっけから病み気味で投げやりな感じのショパンと、関係性に波風立ち始めたサンドとのささくれだった会話からスタート。
続く幸福だった少年時代との対比が印象的で、波乱に満ちたショパンの生涯とその悲劇的な雰囲気を余すところなく伝えています。
歴史に抗い、サンドとの関係に悩みつつ病んでいくショパンの描写は痛々しく、またはっきりと子供向きでない描写も(笑)。
それでも史実を正確に伝えていること、人物設定や当時の時代背景などもイメージぴったりなのはさすが楽譜出版社の編集と感じました。
マイナスポイント
- 物語性が強く資料としては向かない
- やや教育的でない場面あり
マイナスポイントは感想とともに上に書いた通り。本書はあくまでも物語を楽しむ本であります。
またいまいち教育的でない場面とは、要はラブシーンであります(//∇//)
保護者がまず読んでみて本書のエッセンスのみをお子さんに伝えたり、あるいは中学生以上になってからプレゼントするのも良いかもしれません。
口コミ評判
「子供がピアノを弾く際にショパンの曲の理解を深めてもらおうと思い購入しました。
全体的に読みやすく内容も忠実だとは思うのですが、いまどきの風潮なのかラブシーンが少しあり、私はまだ子供に見せたくなかったのでその部分を切ってしまいました。
それでも辻褄はあうのでストーリー的には問題ありませんでした。」(2010年)
やはり気になる方はいらっしゃるもので、上のようなレビューが。↑
そこさえ目をつぶればショパンへの理解の深まりやすいマンガなので、個人的にはちょっともったいないなと感じるものです。
まとめ
- 学習マンガ「ショパン」4社比較の上ベストと判定するのはポプラ社「コミック版世界の伝記 ショパン」
- ポプラ社版は史実に正確。華麗な絵柄によってショパンにまつわるエピソードを過不足なく網羅。巻末資料・年表も詳しい
- 小学館版「ショパン」は分かりやすさ重視。少年マンガのノリで読みやすい
- 集英社版「ショパン」は王道学習マンガらしく正確で安心できる内容。世界名作劇場的な雰囲気
- ドレミ楽譜出版社版「ショパン」は、ショパンらしい悲劇的な雰囲気の伝わる物語としておすすめ
「ショパン」を扱う学習マンガ4種類を比較し、各社それぞれの特徴と管理人なりの評価・感想、及び口コミ評判をお伝えしました。
学習マンガは出版各社から様々なシリーズものが発行され、今や百花繚乱の趣すらあります。
なんといっても読むのに時間がかからず、絵から得られる情報も多いため理解が深まりやすいのが学習マンガの良いところ。
ぜひ本記事をご参考に、あなたとあなたのお子さんにぴったり合った一冊をお選び下さいね(^_^)v
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