三善晃「海の日記帳」全曲解説|初中級〜中級者のピアノ発表会におすすめ!難易度と演奏ポイント

三善晃作曲「海の日記帳」をご紹介します。

「海の日記帳」は、近代的で透明感のある音の響きが魅力のピアノ作品集。可愛らしいタイトルの曲も多く、子どもたちに人気があります。

とはいえ決して易しい作品ばかりではなく、そもそも譜読みはなかなか大変。

さらに独特の世界観を表現するために技術と共に指先の繊細なコントロールが求められます。

本記事では、ピアノ指導者の視点から全曲を一つひとつ丁寧に解説し、それぞれの曲の魅力や演奏のポイントをわかりやすく整理します。

これから「海の日記帳」に取り組む方が、自分に合った一曲と出会えるガイドとして頂ければ幸いです。

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三善晃「海の日記帳」とは

概要と特徴

海の日記帳 (こどものピアノ小品集) [ 三善晃 ]

  • 楽譜タイトル:海の日記帳
  • 作曲者:三善晃
  • 出版社:音楽之友社
  • 初版発行:1982年
  • 曲数:28曲
  • 総ページ数:65頁
  • 定価:1760円

 

三善晃作曲「海の日記帳」は、作曲者が『好きな海のイメージを拾って書いた』とするピアノのための作品集。

海を舞台とする様々な情景、生き物たちの様子、物語性を持つイメージ、そこから想起される感情の移ろいなどを音で描き出した小品集です。

元々「こどものピアノ小品集」という位置付けでしたが、詩的なタイトルや繊細かつ豊かな和声感などに魅了される人も多く、現在では子どもから大人まで多くの人に愛されています。

各曲は短めながらもそれぞれに異なる表情や空気感があり、まるで海辺の風景を一ページずつ綴った“日記”のような構成になっているのが特徴。

華やかな技巧を前面に出す作品は多くなく、それよりも色彩感、繊細な音色の違いや「間」、響きの変化を丁寧に表現する力が求められます。

三善晃について

三善晃は、現代日本を代表する作曲家の一人です。

クラシック音楽を中心に、ピアノ曲・合唱曲・管弦楽曲など幅広い作品を残し、日本の音楽教育にも大きな影響を与えました。

特に合唱作品で高い人気を誇り、学校や合唱コンクールで耳にしたことがある方も多いのでは?

三善晃のピアノ作品は、繊細な響きや独特の和声感、詩的な音楽表現が特徴です。

一方で、単なる難解な現代音楽ではなく、自然や情景、子どもの感性を大切にした親しみやすい作品も数多く作曲しています。

「海の日記帳」はその代表的な曲集の一つ。

美しい音の色彩や静かな余韻を味わえる曲集として、多くのピアノ学習者や指導者に親しまれています。

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三善晃「海の日記帳」の難易度

隠れクマノミ

「海の日記帳」は、初級〜中級後半程度以上まで幅広いレベルの曲が収録されているピアノ曲集です。

特に1〜5番までは、音域やリズムが比較的素直で、手の大きな移動も少ないため、初級者でも十分取り組みやすい作品といえるでしょう。

もちろん、三善晃作品特有のフレージングや繊細な音色表現は必要ですが、技術的には無理なく演奏可能です。

一方、6番以降になると難易度は徐々に上がり、初中級から最終的に中級後半、さらには中上級レベルへと発展していきます。

和音の響きを丁寧にコントロールする力や、複雑なリズム感、声部の弾き分けなどが求められ、単純な指の技術だけでは弾きこなすことが難しいもの。

また、曲によっては高度な音色感覚や集中力も必要になるため、「音楽を聴く耳」が育っているかどうかで完成度に大きな差が出る作品集でもあります。

そのため、「海の日記帳」は初級者が三善晃の世界に触れる入口としても、中級者が表現力を深める教材としても非常に優れた曲集といえるでしょう。

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三善晃「海の日記帳」全曲解説

波のアラベスクのイメージ

以下、三善晃のピアノ曲集「海の日記帳」全28曲をご紹介します。リンクはYouTubeへ。私が演奏しています。

なお、この曲集の曲順は完全に難易度順に並んでいるとはいえません。よって、ざっくりとした難易度の目安を添えました。

当ブログの、曲の難易度の設定方法を説明する記事はこちら↓

ピアノ曲の「難易度」とは?レベル設定と基準について解説!入門から最上級まで

曲順 題名/英語タイトル 難易度の目安
1 海の ゆりかご/Cradle of The Sea 初級A
寄せては返す波をゆりかごに例えた曲。ハ長調、4/4拍子のシンプルな譜面でありながら見た目ほど易しくありません。左右の手のフレージングに気を配りましょう。ゆりかごの安らかな呼吸を感じるように。
2 浜かぜ と 夜明け/Breeze and Daybreak on The Beach 初級B
右手1拍目のテヌートはアクセントではなく、腕の重みを利用して弾きます。ト短調からト長調に転調した時、左手に右手のテーマが現れます。朝日とともに明るくなる海辺を思い描きながら弾いてみましょう。
3 うつぼの 時計/A Moray’s Clock 初級C
ウツボが主役の音楽は世界的にも稀なはず( ´∀`)長くてうねる身体を持つウツボの時計は止まっているかのようにのんびり。でもその気になった時は巣穴から出て来て狩をするそうな。左手はウツボのぬめ〜とした動き、右手は呼吸と思って弾いてみては。
4 おやすみ、夕映え/Good Night, Sunset 初級C
穏やかな波間に、太陽がゆっくりと沈んでいきます。何度も繰り返されるテーマは少しずつ表情を変えながら語りかけるように。ラストの”lontano”は「遠くから聞こえるように」の意味です。辺りはやがて薄闇に包まれて、何も見えなくなっていくのでしょうね。
5 浜百合の 恋/A Lily’s Love on The Shore 初級C
浜百合は海辺に咲く小さな百合の花。ゴツゴツした岩場に咲くことが多いようです。右手と左手は言葉を交わすように、フレーズ感を味わいつつ弾いてみては。最後の言葉は空中に消えてしまったかのように。思いは届かなかったのかもしれませんね‥(。-_-。)
6 やどかりの ひっこし/Hermit Crab Moving Out 初中級C
成長に伴って殻を取り替えるために引越しするヤドカリ。この曲のユーモラスでぎこちない動きはまさにそんなイメージ。右手の動きは、適当な殻を探して行ったり来たりするのを表しているのかも。休符をしっかりとってわざと不器用な動きを表現してみましょう。
7 大きな貝の ひるね/Siesta of A Big Shellfish 初中級B
右手と左手が12小説ずつまったく同じ歌を歌います。これをよく自分の耳で聴きながら演奏しましょう。2、4、6小節などの1拍目右手に付けられた< >は、いわゆる『三善アクセント』というもの。思い入れ強く、余韻の残るような音を求められていると解釈できます。
8 波が ふたりで‥/The Two Waves Together 初中級C
波とは、確かに二つセットになって寄せては返すようにも見えます。波の柔らかさ、穏やかさを表現するためにはテンポはやや遅めがおすすめ。三連符が鋭い付点音符にならないように気をつけましょう。
9 やどかりの 波のり(サーフィン)/A Hermit Crab Surfing 中級A
再び登場のヤドカリですが、今回は颯爽とサーフィンをしています。陸上での不器用な動きとは打って変わって楽しそうな音の揺れを感じながら弾くと良さそう。三度音程の練習曲でもあります。重くならず爽やかに。
10 シシリー島の 小さな貝がら/Little Sea Shells of Sicily 初中級B
シシリエンヌはイタリアのシチリア島由来のロマンチックで優雅な舞曲。ゆったりしたテンポと揺れるような動きが特徴です。<->も三善作品で多用されますが、これはアクセントというよりも重みと伸びのある音が欲しいところ。最後はperdendosi(消えてゆくように)。
11 海の 弔列/Mourners’ Line in The Sea 中級A
複雑な変拍子と左手の三度音程の動きが難しい曲。弔列は悲しみを伴いつつ粛々と進みます。テンポは揺らさず正確に淡々と演奏しましょう。静かな音楽が波のうねりによって遠くへと運ばれるようなイメージで。
12 海ほうずきの うた/A Song of Spiral Shells 初中級B
海ほうずき(ほおずき)とは?調べると「巻貝の卵嚢」と出て来ますが英題は”Spiral Shells”。おそらく単に巻き貝のことを指すのでしょう。そして巻き貝を耳に当てると様々な音が聞こえてきます。どんな物語を紡ぐのか考えながら弾いてみては?
13 あこや貝の 秘密/A Secret of A Pearl Shell 初中級C
あこや貝は真珠貝。殻の中にこっそりと美しい真珠を宿しています。そして実は貝がらそのものも、外側は無骨ですが内側は実に美しいもの。そんな秘密を誰かにそっと語りかけるように。
14 笛吹き奴の かくれんぼ/Tropical Fish Playing Hide-and-seek 中級B
「笛吹き奴(やっこ)」とは何か?英題はご覧のように”Tropical Fish”なので「熱帯魚の隠れんぽ」の意味になります。例えばクマノミのような色鮮やかな魚たちがひらひらと海の中を泳ぎ回る姿のことかもしれません。明るく色彩豊かな南国の海の中をイメージしつつ、左右の手が上になったり下になったりしながら優雅に演奏することこそがこの曲のポイントです。
15 沈んでいった 鍵盤/The Keyboard Sunken 中級B
「海の弔列」と似た悲しみの曲。深い海の底に向かって、どこまでも沈んでいく古いピアノを想像して下さい。基調になるのは『シ』の音。ピアノの姿は見えなくなっても音だけはいつまでも海の中に鳴り響いているのです‥映画の1シーンのような幻想的なイメージで。
16 伊勢海老おじさんがしてくれた「お話」/”Tale” by Uncle Lobster 中級A
伊勢海老は長生きで何でも知っています。この曲は、海の底で長い年月を生きてきた伊勢海老おじさんが昔話を語ってくれるような作品。ゆったりと、時にコミカルに、流れるようでいながら足取りはしっかりと、不思議な物語を語ってみて下さい。
17 波 と 夕月/Waves and The Evening Moon 中級B
タイトル通りの情景を描写した作品。寄せては返す大きな波のうねりと、その上に浮かび上がる夕暮れの月の対話とも解釈できます。スラーのかかり方に気をつけながら、音で『波と夕月』の絵画を描くつもりで弾いてみましょう。
18 蟹の 散歩道(プロムナード)/Crabs’ Promenade 初中級C
コミカルで可愛らしい曲です。カニさんは常に横歩き。ハサミを振り上げつつちょこまか動く、そのお散歩姿を描写しましょう。左手にメロディがありますが実は右手にも旋律が隠れています。アーティキュレーションを強調するとよりユーモラスな雰囲気が出ます。
19 シレーヌの 機織り歌/Sirens’ Weaving Song 中級C
シレーヌはセイレーン。ギリシャ神話に登場する海の魔物で、人魚の姿をしています。この曲は幾重にも旋律が重なっており、まるで一枚の布を織っているかのようなイメージを持つと良さそう。機織り歌なのでテンポは揺らさず、どこか無機質な雰囲気で。
20 水泡の おどり/Bubbles Dancing 中級A
海の泡たち(bubbles)の軽快な舞曲。とはいえ彼らには足がないのでf^_^;はっきりとリズムを刻むというよりは楽しげに戯れるように。ちなみに泡というのはそれほど大きくはなりません。のでfmやfは控えめに弾くと良さそうです。
21 ソ、ソ、ソ‥の小烏賊たち/Sol, Sol ,Sol‥So Little Squids 中級C
謎めいたタイトル。題名通り、ソの音で四分音符と二分音符の組み合わせたテーマのリズムを刻み続けます。青い海の中、何百という小さな赤ちゃんイカたちが泳ぎ回る光景をイメージしましょう。技術的に難しい曲ですができるだけ重くならず爽やかに。
22 珊瑚の 唄/Coral’s Song 中級B
珊瑚とは美しいものですが、この曲はなぜこんなにも物悲しいのでしょうか。もしや絶滅危惧種としての自身の未来を儚んでいるのかも‥。なお「歌」でなく「唄」であることに注目。朗々と歌い上げるのではなく、ひっそりとつぶやくように控えめに歌いましょう。
23 わんぱく さざえ/A Naughty Wreath Shell 中級C
難しい曲です。活発に動き回るわんぱくで悪戯好きのサザエの姿を思わせる勢いとエネルギーにあふれています。三度での細かい動きや複雑なアーティキュレーションを意識して、機敏かつ奔放に演奏してみて下さい。
24 手折られた 潮騒/Sound of The Sea Picked Up 中級C
謎めいたタイトルの曲です。「手折られた」とは何を意味するのでしょうか。8-9小節、18-19小節などの間の取り方はとても大切。静かな波の気配、海流のたゆたい、途切れてしまった潮騒の余韻を表現しましょう。大人のための一編の美しい詩のような作品です。
25 さよりっ子たちの 訪問/Snipe Fishers’ Visit 中上級A
可愛らしいタイトルですが技術的にはかなり難しい曲。高音でのキラキラした響きはまるでサヨリの大群が身を翻しながら泳いでいるかのようです。一刻もじっとすることなくそれでいて忙しげではなく、優雅に戯れるような演奏を目指しましょう。
26 磯波の キャプリス/Breakers’ Caprice 中上級A
キャプリスはカプリチオ(奇想曲)。イタリア語で「気まぐれ」の意味です。波が泡立ち、逆巻きながら岩にぶつかり砕け、様々に変化する様子が音で描かれています。練習曲(エチュード)ともいえるテクニカルな曲です。
27 水泡の おにごっこ/Bubbles Tagging 中級C
まさに和声短音階のエチュードのような曲。水の泡が次々と跳ね回り、追いかけ合う情景を思わせます。細かな音型の連続を巧みに処理するには、指の機敏さと正確な拍感が求められます。
28 波のアラベスク/Arabesque of waves 中級C
波の様々な表情を描き出す名曲。3つの部分に分けられます。1ページ目は波のさざめきと透明感を感じさせ、2ページ目には転調と共に激しく打ち寄せながらさかまく大波の描写。3ページ目で沈静し、優しく包み込むような柔らかさを感じさせます。どこまでも続くかのような長い余韻とともに、この曲集も終わりを告げます。

 

「波のアラベスク」についてはぜひこちらの記事も参考にして下さい↓

【ピアノ発表会】人気の定番曲 中級レベル10選を解説|小学校高学年〜中学生におすすめ!

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三善晃「海の日記帳」まとめ

海のイメージ

三善晃作曲「海の日記帳」についてお伝えしました。

「海の日記帳」は、海の情景や感情の揺らぎを繊細に描いた、詩的な魅力あふれるピアノ曲集です。

海の持つ様々なイメージを表現するためには、ただ正しく音を並べるだけでなく「どんな響きがほしいか」を考えながら演奏する力が求められます。

和音の響きの変化、音の余韻、ペダルによる色彩感、旋律の歌わせ方などを自分で聴き分けながら演奏することで、音楽的な感性や表現力を深く育てることができるでしょう。

発表会でも印象に残りやすい曲が多く、表現力を磨きたい方にもおすすめ。

ぜひ自分のレベルや個性に合った一曲を見つけて、「海の日記帳」の奥深い世界を味わってみてくださいね。

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