ピアノは「才能」がないと上達しないのでしょうか?
「ウチの子、ピアノを習いたいって言ってるけどそんな才能あるのかしら。」
「ピアノを習わせてるけど、特別な才能があるわけじゃなさそうだし、やめさせようかしら‥」
お子さんにピアノを習わせている、あるいは習わせようと考えている保護者の方に共通するのが上の疑問。
もしやあなたにもそんな不安があるのではありませんか?
・ピアノのような難しい楽器を弾くには何か特別な才能が必要に違いない
・でも家族や親類の中にはピアニストやピアノの先生など1人もいない
・才能がないならピアノなどを習わせてもムダに終わるのではないか?
だいたい上のような三段論法で心配されている方が多い印象を持っています。
この記事は、そんな疑問にお答えすべく、40年近く現役のピアノ教師を続けている私が自信を持ってお伝えするものです。
ピアノを弾くのに「特別な才能」などは必要ありません。
以下はその証明です。
目次
「ピアノの才能」とはどんなもの?
ところで、ピアノの才能とは何でしょう。
「ピアノの才能を持つ人」とはどんな人だと思いますか?
・国際ピアノコンクールで上位入賞するような人
・欧米の名門音楽大学を優秀な成績で卒業できるような人
・1人で大きなホールを満員にできるような著名なピアニスト
・ストリートピアノで人だかりができるような超絶技巧の持ち主
一般的にはこんなところでしょうか。
確かに、このような人の数は多くありませんし、彼らは特別な才能を持っていると言えるでしょう。
では、人を圧倒するようなピアノの技量の持ち主以外のピアニストたち、ピアノの指導者たちは「才能がない」のでしょうか。
そんなことはありませんよね。
サントリーホールを1人で満員にすることはないけれど、国内外の音楽ホールやYouTubeなどで素晴らしい演奏を披露するピアニストはたくさんいます。
また国内を中心に活躍し、コンクールのジャッジを努めたり、音楽大学で教鞭を取ったりする優れた指導者の先生方。
大きなコンペティションで上位入賞する子どもたち。
彼らもまた優れた才能の持ち主と言えると思います。
ではさらに、それ以外の人々はどうでしょう。
私を含む無名のピアノの先生たち。
音楽大学の学生たち。
あるいは個人で楽しむ無数のピアノ愛好家たち。
さらに、ピアノをよく練習する普通の子どもたち。
そして、習い始めたばかりの学習者たち。
果たして、彼らは「ピアノの才能がある」のでしょうか。
あるいは、「才能がない」のでしょうか。
もしもこういった普通の人々には「ピアノの才能がない」のだとすると、ではどのあたりの演奏レベルから「才能がある」と言えるのでしょうか。
‥いかがでしょう。
「ココまでが才能アリの人・それ以外は才能ナシの人」などとは言えませんよね。(笑)
「ピアノの才能」という概念が、いかに曖昧で感覚的なものであるかがお分かり頂けたのではと思います。
ピアノを弾くのに才能は必要?
確かに、ピアノは演奏の難しい楽器です。
でも、趣味として楽しむのなら、決して「特別な才能」などは要らないのです。
なぜ、そう言い切れるのでしょうか。
例えば、他の趣味のことをちょっと考えてみて下さい。
テニス・水泳などのスポーツ、バレエやヒップホップなどのダンス、あるいは手芸、お茶やお花、語学やお料理など。
こういった趣味を楽しむ人々がみな、「その道で身を立てる」ために始めるわけではありませんよね。
「水泳のオリンピック選手にオレはなる!」とか、「私が手芸の道を極めてみせる!」などと言って始める人はそうそういない訳であります。
カジュアルに「楽しそうだから習う・習わせる」というケースがほとんどでしょう。
ピアノも同じです。
ピアノ学習者の多くは、「習うからには有名なピアニストにならなくては!」などとは思っていません。
「ピアノが好きだから」
「弾いていると楽しいから」
「憧れの曲を弾きたいから」
ピアノを習い、または独学で練習しているのです。
少しずつ泳げる距離が伸びていくように、より複雑な手芸作品が作れるようになっていくように、ピアノも少しずつ弾ける曲が増えていくのです。
ピアノは、正しいやり方で正しい努力をすれば、誰でも趣味として楽しむことができるようになるものです。
他の多くの趣味や習い事と同じように。
ピアノを趣味として楽しむために必要なのは「特別な才能」ではありません
趣味としてピアノを楽しむために「才能」は必要でないとすると、何が必要なのでしょうか。
実はこちらも、他の趣味と同じなのです。
・ピアノ、電子ピアノなどの楽器(道具)
・楽譜(テキスト)
・練習するための場所
・教師による適切な指導、または自己学習のための教材
・レッスン料、月謝、楽譜(道具類)を買うためのお金
・反復練習
これだけです。
他の習い事とまったく変わりはありません。
習い事でも勉強でも、どれくらい上達できるかというのは、どの程度努力できるかによってある程度決まってきます。
ピアノの場合はできれば毎日の練習が望ましいので、その分週に一度通って練習するのが標準とされる水泳やダンスよりハードルは高いかもしれません。
それでも人より抜きん出た実力を身につけたいと思えば、どんなジャンルであれコツコツと練習、訓練を続けるのが1番の近道であることに変わりはありません。
「毎日、一定時間の練習を何年間も続けることができるかどうか」
「レッスンで注意されたところを修正し、また練習を続けるという地道な努力ができるかどうか」
こういった努力を続けることができる能力こそが、ピアノを弾くために必要なものなのです。
これは「特別な才能」などではありません。
人が何かを習得しようとするときに必ず必要となるものです。
「才能」とは何でしょう
「才能がないからピアノをやめる・やめさせる」という考え方の危うさ
ここまでで色々見えてこられたのではないでしょうか。
「親類にピアノが得意な人はいないし、才能ないのに習ったってロクに弾けるようにはならないでしょ」
「ピアノは特別な才能がある人がやればいいと思う。ウチはそれより〇〇でも習わせた方が‥」
「ウチの子はピアノの才能がないみたいなので、やめさせて塾に通わせます」。
子育ての過程で多くのお母さんたちから、あるいは生徒さんの保護者の方から、何度となく聞いた言葉です。
これらの言葉に共通するのは、「ピアノ=才能が必要」というがんじがらめの思い込みです。
でも、少し妙だとは思いませんか?
ピアノ以外の楽器であれ、スポーツであれ、ダンスであれ語学やプログラミングであれ、コツコツとした地道な努力は必要なはず。
なぜ、「ピアノをやめさせて〇〇を習わせれば〇〇が上達する」との考えに到るのでしょう。
「ピアノは才能が必要だけど、〇〇は才能がなくても大丈夫」と思っていらっしゃるとしたら、少し危険です。
〇〇の中に入る言葉が何であれ、習わせているだけで上達するほど、甘くはないはずです。
毎日毎日の、地道な努力を続ける・続けさせることができなければ、何を習ったとしても「身につける」ことは難しいでしょう。
「才能」は、普通の人々が誰でも持っている力
例えば、
「ピアノはからっきしだったけど、ギターは好きで毎日弾いている」
「ピアノの練習は嫌いだったけど、ダンスにハマって部活の厳しい練習を毎日頑張っている」
「ピアノをやめた後、△△中学(高校)に入りたくて猛勉強をしている」
これなら安心です。
彼らは「ピアノの才能はなかった」けれど、「ギター、ダンス、勉強の才能があった」のだと言えるでしょう。
「才能」とは。
地道な努力を日々積み重ねていける力のことを指します。
それは、ピアノに限ったものではなく、全てに通じる力です。
天才などではない、ごく普通の人々が誰でも持っている力、持ち得る力のことです。
この力さえあれば、人は自分自身を大きく成長させることができます。
困難にぶつかっても新たな目標を定め、乗り越えていくことができるでしょう。
そして、もしもこの力がご自分やお子さんに備わっていないと感じるならば、ぜひ身につけるような工夫が必要です。
私は、「努力する力」を身につけるのにはピアノが最適と考えています。
少し手前味噌ですが‥(笑)
この演奏困難な楽器を習うことで、努力の必要性を学ぶことができるとしたら素晴らしいではありませんか。
そんなピアノとの付き合い方があってもいいと、私は考えています。
ピアノは「才能」がないと上達しないのでしょうか? まとめ
まとめてみましょう。
・ピアノを弾くのに「特別な才能」などは必要ない
・才能のある・なしに境界線は引けない
・ピアノは正しいやり方で努力すれば誰でも趣味として楽しむことができる
・それは、他の趣味や習い事、勉強なども同じ
・ピアノに限らず、他の趣味、習い事、勉強であっても、上達の度合いは努力の有無によってある程度決まってくる
・物事の上達に必要な「才能」とは、日々コツコツと努力する力のこと
・それは天才などではなく、ごく普通の人々が誰でも持っている、持ち得る力のこと
・その力を手に入れるためにピアノを学ぶのもアリ
特に大切と思われるところは赤文字にしてみました。
ピアノは確かに弾けるようになるまでが大変ですが、正しい努力をすれば決して「特別な才能」などがなくとも楽しめるようになるものです。
もしも今、あなたが「子どもにピアノを習わせたいけれど、才能がないとムダに終わるんじゃあ‥」などとお考えなら。
そんな心配は杞憂というものです。
なぜなら、才能というものは特別な力ではなく、誰もが持っているものだから。
どんな分野であれ大切な、「地道に努力する力」こそが才能というものなのです。
ぜひお近くのピアノ教室の門を叩いてみて下さい。
ピアノを、お子さんの才能を伸ばすための手段として活用してみてはいかがでしょうか。
関連記事↓
ピアノは子供にとって無駄な習い事?Yes or No それぞれの理由と無駄にしないための3つのポイント