ピアノの発表会の曲に不満なとき

楽しみにしているピアノの発表会。

日時と会場が発表され、そろそろ本格的に練習を開始する方もいらっしゃるかもしれません。

ところで、先生から

「今年はこの曲で出演しましょうね」と提案された曲に、今ひとつ納得できない気持ちになった経験はありませんか?

私はありますよ。^ ^

 

「せっかくの機会なのに、コレ‥?」

「また前回と似たような感じだなあ」

「なんかヘンな曲。好きになれない」

などなど。

 

そんな時、どうしたらよいでしょうか。

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ピアノを習う立場から・かつて生徒だった自分の記憶

貴婦人の乗馬イメージ

5歳でピアノを始めた私の、最初の発表会の曲は、ブルグミュラーの「貴婦人の乗馬」でした。

習い始めてから1年半程度。まだ小学校1年生でした。

足台を使ってペダルを踏む必要がありましたし、小柄で手が小さい私には正直、無理な選曲だった気がします。

聴き映えのする人気曲で母は大喜びでしたが。

こちらの記事をどうぞ。ピアノの発表会であこがれの曲をゲットする法

 

1年後、引越しのため別の教室の発表会に出演した時は「エリーゼのために」。

2年生になっていましたが依然として小柄で、片手でオクターブが届かなかったのですがどうやって弾いたのでしょう。

やはり人気曲で両親は喜んでいましたが、同じ教室の先輩のママにイヤミを言われた記憶が‥😅

「エリーゼ」恐るべし。

 

次の年、諸般あって別の先生に習うことになり、状況は一気に変わりました。

「基礎ができていないのに進みすぎ」とのことで、日々の練習曲は一気に初級レベルに。

発表会の曲も「ソナチネ◯番の△楽章」のような感じになりまして、よく覚えていません。

それから何年もの間、発表会といえばそういった無名の地味な曲ばかりが続き、流石にモチベーションが低下していったのを覚えています。

 

もちろん、その頃の地道な基礎・基本の積み重ねがあったからこそ音楽の道に進むことができるようになったのは間違いありません。

それでも、その時の私は普通の子ども。

当時の先生の厳しい指導に正直疲れてもいました。

 

同じクラスの友達が、発表会ではショパンを弾かせてもらうことになった、とか、「舞踏への勧誘(ウェーバー)」を弾いた、などと聞けば自分と比べて落ち込んだりしたものです。

足掛け5年間、ソナチネとソナタ以外はほとんど弾くことがありませんでしたから。

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教える立場になってからわかったこと・曲決めは配慮の嵐

ベートーヴェンの像

月日が流れ、私は教える立場になりました。

そしてわかったことはたくさんあります。

発表会の曲を決める時、いかに多くの配慮が必要になるか。

 

生徒さん一人一人の、

・年齢・体格・現在の技術などへの配慮

・予想される練習時間・他の習い事や塾、学校の定期試験、部活などへの配慮

・本人の性格への配慮

・年齢の近い他の生徒さんとのバランス

・練習に対するの保護者の方のご理解とご協力

 

また、

・楽譜が手に入りやすいかどうか(楽譜のコピーは違法です)

・同じ生徒さんに毎回似たような曲を提案していないか(毎年ソナチネはガッカリです汗)

・曲が長すぎたり短すぎたりしていないか(クレームの元です)

・プログラム全体のバランス(古典派ばかり、ロマン派ばかりは避けたい)

も重要な要素です。

 

これらを鑑みながら、パズルのピースをはめるように、一人一人に最適と思われる曲を選び、提案します。

なかなかの難事業であることがお分かり頂けると良いのですが。

それも、以前はそれぞれの生徒さんに対して「今年はコレでいきましょう」と1曲だけ提案すればよかったのですが、最近はそうもいきません。

多くのお教室で、1人に対して複数の曲を提示して、選んでもらうやり方が増えていると思われます。

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曲への不満は「クレーム」扱いに・先生のご提案に従うのが望ましい

電話する困った顔の女性

私は通常、1人につき3曲ずつ提案して、ご本人に選んでもらっています。

大変ではありますが、生徒さん(特に保護者の方)から曲に対するクレームがあるともっと大変だからです。

そう、先生方にとっては、保護者の方からの発表会の曲への不満は紛れもなく「クレーム」です。

 

上記のように様々な要素に配慮しつつ発表会の曲は決められますので、

「ちょっとこの曲イヤなんですけど」とは、できる限りおっしゃって頂きたくないのが本音です。

どうしても納得できない時以外は、曲の変更を申し出るのは避けたほうが無難です。

発表会の曲への不満の表明は、先生にとってはかなりのダメージです。

よほどのことがない限り、先生のご判断に従うのがよろしいかと思います。

 

今でも忘れられない事例があります。

当時、音楽教室で働いていた私は、多くの生徒さんを教えていました。

複数の先生のいる教室でしたので、発表会の曲決めでは、他の先生の生徒さんにも配慮する必要があります。

新米教師の私は、なるべく先輩の先生方と曲が被らないように、それほど有名ではないけれど発表会の場にふさわしく聴き映えしそうな曲を探し出して提案していました。

 

20人近くの生徒さん達全員に曲出しが終わり、ヤレヤレと一息ついていたところ電話が鳴りました。(まだメールなどのない時代です)

小学校高学年の生徒さんのお母様でした。

型通りのあいさつの後、強い調子で

「頂いた曲に納得がいきません」「こういう曲は、うちではちょっと承服しかねます」「主人も同じ意見です。曲を変えて下さい」

とおっしゃったのでした。

 

提案した曲は、バルトーク(Bartok,1881〜1945)「子供のために①」より40番『豚飼いの踊り』。

ハンガリー民謡を基にしたにぎやかな曲で、遠くから牧人と家畜の群れが近づいてきて目の前を大音響で通り過ぎ、また去っていくという構成になっています。

ダンパーペダルを使って音量を出し、威勢の良さやお祭りのような楽しさを表現する曲で、体格の良いそのお子さんにはぴったりだと思ったのですが。

「豚飼い」という語感がよろしくなかったのかしら‥。

女の子では確かに微妙ですが男の子でしたし、特段に不協和音ばかりの曲というわけでもなく、ただただ謎でした。

 

それでもクレームには対処しなければなりません。

他の生徒さんと曲が被るわけにはいきませんのでかなり難儀しましたが、近・現代の曲がお嫌いとのクレームと理解しましたので、逆に古風なバロック期の曲を選びました。

その後は特に何もおっしゃってこなかったのでご納得されたと解釈しています。

 

この一件で懲りた私は、発表会の曲を出すときは必ず複数曲を提案することを自主的に始めました。

それ以前は、曲に対するクレームとまではいかなくとも、

「普通の本じゃなくて『全音ピース』の中から選んで下さい」とか、

「『チューリップのラインダンス』なんて先生、ウチの子幼稚園生じゃないんですけどぉ〜(笑)」

などのような、そこはかとないご不満の表明があったのですが、それが一切なくなりました。

(註:「チューリップのラインダンス(平吉毅州,1936〜1998)」は高学年のコンペの課題曲になったこともある難曲です)

 

「チューリップのラインダンス」についての詳しい解説記事はこちら↓

「チューリップのラインダンス」の難易度レベルと演奏のコツ|発表会なら何年生で弾く?

それでも納得できない時にはお願いしてみよう

音符とボトルアート

そうであっても、発表会はやはり生徒さんのためのイベントです。

何よりも、彼ら彼女らがやや難しい曲に取り組むことを通して、楽しみながら成長できるのがもっとも大切なことです。

何十年も前とは違い、先生方もその辺りのことは理解しておられますので、

どうしても曲に納得がいかない場合は、お願いするという形でていねいに意思表示を試みてはいかがでしょうか。

 

例えば、

「先生、ちょっと曲が短いように感じますので、できたらこの機会にもう1曲勉強させていただけないでしょうか」

とか、

「今年は割と練習時間が取れるので、もう少し頑張りたいんですがいかがでしょう」

とか、

「◯◯あたりの曲にずっと憧れていたんですがまだ力不足でしょうか」

などなど。

 

ポイントは、あくまでも

もっと努力しますからより長い曲・難しい曲を出して下さいませんか」というスタンス。

先生だって人間ですから、やる気のある生徒さんには頑張ってもらいたいと思うのが人情というものです。

間違っても前述のような、

「この曲気にくわないから変えて」などのダメ出しは避けましょう。

私のように、一生忘れられないほどの衝撃を先生に与えるハメになります。(笑)

 

そして当然ながら、お願いして曲を変えて頂いたり、もう1曲加えて頂いたりしたのなら、

先生のご期待に添うべくしっかり練習しましょう

「地道な練習はイヤだけど発表会ではカッコいい曲が弾きたい」

というのでは先生も困ってしまいます。

 

発表会は、華やかに見えますが、あくまでも日頃の努力の成果をお客様に聴いて頂く場です。

先生と生徒さん、双方がそれぞれの立場で曲と向き合い、一つの作品を作り上げていくのです

どうか、この文章を読んで下さった皆さまが、先生のお気持ちやご期待に応えるべく努力され、素晴らしい発表会の経験をされることを願っています。

 

お読み頂いてありがとうございます。

 

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