ピアノ発表会で「エリーゼのために」を美しく弾くための7つの処方箋

秋の発表会シーズンたけなわ。

あちこちのホールでは、今日も多くのピアノ発表会が開かれていることでしょう。

 

そして、プログラム中に高い確率で含まれているのが「エリーゼのために」。

ピアノの初心者にとって憧れの曲であり、学習者にとっては一つの区切りとなる象徴的な曲。

この曲を発表会で弾きたいと考える生徒さんはとても多いです。

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でもこの曲は実はなかなか難しく、人前で演奏するとなるとかなり大変です。

本記事では、晴れてこの曲を次回の発表会で弾く権利を得たあなたに、どうすればより美しく演奏できるか、そのコツをお伝えして参りたいと思います。

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「エリーゼのために」はどんな曲?

「エリーゼのために」の概要

「エリーゼのために」が作曲されたのは1810年。

正式な題名は、

Bagatelle  “Für Elise” , a-moll  WoO.59

バガテル「エリーゼのために」, イ短調 WoO(作品番号なし)59。

バガテルとは、もともと「ささやかなもの」「とるにたりないもの」という意味があり、そこから転じて軽い小曲のことをさすようになりました。

 

ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven, 1770-1827)40歳の時の作品です。

この頃のベートーヴェンの作品として有名なものは、

1809年 ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

1810年 ピアノソナタ第26番「告別」

などが挙げられます。

 

ベートーヴェンの作品の中では中期から後期の手前、優れた楽曲が多く生み出された時期の作品です。

「エリーゼ」とは誰なのか

ベートーヴェンは、生涯で多くの女性と関わりを持ちました。

真面目なイメージの割には色々あったようです。😄

ただ彼の人生に「エリーゼ」という女性は登場しません。

そのため、様々な研究が重ねられました。

現在、最も有力なのは、エリーゼはテレーゼ・マルファッティ(Therese Malfatti, 1792-1851)ではないかという説です。

彼は悪筆(字がヘタ)で有名で、『Therese』を『Elise』と誤読されたのではないかという訳です。

この曲を作曲した年にベートーヴェンはテレーゼに求婚しており(フラれてしまった模様‥)、また楽譜は彼女が所有していました。

こうしたことから、エリーゼはテレーゼのことだったのではないかと考えるのが自然ということです。

 

もう一つの説は、彼がソプラノ歌手のエリザベート・レッケル(Elisabeth Röckel)のために作曲したのではないかというものです。

2010年にドイツの音楽学者が唱えた新説です。

その根拠としては、彼女が生前エリーゼと呼ばれていたことが教会などの記録から確認できたため。

彼女は1813年にJ.フンメルと結婚してしまいました。

 

今となっては真相は誰にもわかりません。

いずれにしても、ベートーヴェンの報われなかった恋愛が関係していることは間違いないようです。

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発表会など人前で演奏する時のコツ

「大人の恋の物語」ととらえてみよう

さて、いよいよ人前でこの曲を演奏する機会に恵まれたあなた。

この魅力的な曲を、どんなふうに弾きたいですか?

どう見ても、華麗なテクニックを見せびらかすような曲ではありませんよね。

何しろ、ベートーヴェンが指示したのは曲の最初の Poco moto (やや動きをもって)という表示と冒頭のppのみ。

 

何度も執拗に繰り返される、翳りを帯びた揺れるようなメロディ。

哀愁と、わずかな明るさと、それとはうってかわった激しさ。

この振れ幅の大きな不安定さは、まさにロマン派の作曲家による表情豊かな楽曲そのもの。

ベートーヴェンは古典期からロン派への橋渡しをした作曲家でもあるのです。

 

そして、ロマン派の文法で書かれたこの曲のテーマは、上で述べたようにやはり恋愛でしょう。

この時ベートーヴェンは40歳。

上に挙げた女性はどちらも彼よりはるかに若く、最終的にフラれてしまう訳ですが、彼の青年のような若々しい心がこの繊細な曲を生み出した原動力と考えたら素敵ではないでしょうか😄

 

大人のための、わずか3分間の、短い恋の物語

うん、いいじゃないですか。コレでいきましょう(笑)。

パートごとの性格を弾き分ける

ABCそれぞれのパートには特徴があります。

それぞれのパートの性格をうまく表現できると良いですね

 

Aはおなじみの繊細なメロディ。

憂鬱で哀愁を帯びた美しさで、最も人気のパート。

ここしか練習したがらない生徒さんもいるくらいです。(笑)

フレーズの切れ目が雑にならないように慎重な指さばきが求められます。

 

Bは、ほのかな希望を感じさせるようなヘ長調の部分。

明るい雰囲気ではあるものの、底抜けの上機嫌さとは程遠く。

32分音符の難しいパッセージが出てきますが、跳ね回るようではなく、あくまで軽やかに、粒の揃った音で弾けたら素敵です。

 

Cは、今までの雰囲気とはうって変わった暗く激しい部分です。

難しいので音量のコントロールが効かず、乱暴な印象になりがち。

左手の連打音は強くなりすぎないようにしましょう。

ダダダダダダダ‥と工事現場みたいにならないように。😄

 

ABCすべてのパートに共通する要素として、音が強くなりすぎないように、繊細に演奏するとこの曲らしい雰囲気が出ます。

ペダリングとフレーズ

この曲のペダリング(ペダルの踏み方)は難しく、注意が必要です。

繊細なフレーズの響きを壊さないように注意深く踏まなければなりません。

Aパート

例えば冒頭、2、3、4小節の1拍目にダンパーペダルを踏むよう指示があります。

この1拍目、右手は「ミレ♯ミレ♯ミシレドラ」のフレーズの最後の音である『ラ』音を弾くタイミングにあたります。

つまり、右足でペダルを踏むタイミングと右手フレーズ最終音のタイミングが重なっている訳です。

この時、ペダルを踏むことに気を取られているとフレーズ最終音にアクセントがついたような響きになってしまいます。

無理やりカタカナで書くと、

「ミレ♯ミレ♯ミシレドラ! ドミラシ! ミソシド!」‥のような謎フレーズに。😅

気を付けたいものです。

Bパート

Bパートは軽やかさが求められますが、ここでペダルを踏みまくる方がいます。

半音で動くことの多いこのあたりのメロディ下でペダルをバンバン踏まれた日には、音が濁ってかなり大変なことに。

ここは、ぜひ「ハーフペダル(ペダルを全部踏み込まず、半分くらい踏んで音をつなげつつ音量を抑える踏み方)」というテクニックを使ってみられると良いと思います。

この操作は足台では困難ですので、直接ペダル操作ができる年齢、体格の方に向く方法です。

Cパート

左手の同音連打の部分で、1小節ずつ単純にペダルを踏み続けている方が時々。

ここは右手のメロディを浮き立たせるべく、頻繁に踏み換えたり外したりが必要な場面です。

これがうまくできないと、やはり音が濁って美しくありません。

 

ペダル操作はこの曲のキモとも言える大切な部分。

面倒がらずに細かく踏み替えてみて下さい。

演奏がワンランクアップして聴こえること請け合いです。

エンディング

かなり激しく盛り上がりながらも、最後はさびしく消えていくような終わり方をするこの曲。

最後の和音は特に重要ですが、よく見ると「ラ」と「ド」しか使われていないのですね。

これはかなり気を付けないと、音がすっぽ抜けたり、逆に強すぎてたくましくなったりしそうです。

 

「ラ」音がが3つ、「ド」が1つ。

まるで、消えていくはかない恋の終わりを象徴するかのような最終音

2種類の音だけで万感の想いを表現すべく、細心の注意をもって締めくくって下さいまし。

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「エリーゼのために」弾き方のコツ・まとめ

まとめてみましょう。

・「エリーゼのために」は、ベートーヴェン40歳時の作品。

・女性との関わりの中で作曲されたものらしい。

・それゆえ、テーマを「大人の恋」と考えると良いかも。

・パートごとの性格を表現するように。

・曲のすべての部分で音が強くなりすぎないように、繊細に演奏する。

・複雑なペダル操作が必要

・最終音に注意。はかなく消えていくように奏する。

 

‥こうしてみると、まったく子ども向きの曲ではありませんよね。

なぜ我が国では小学生の子ども達の発表会御用達曲となったのか、興味深いものがあります。

どれほどピアノが上手でも、小学校低学年のお子さんに40歳のおじさんの恋心などわかるはずもないのですが。

 

とはいえ、これはあくまでひとつの解釈にすぎません。

演奏する人それぞれの「エリーゼのために」があって良いのです。

この美しい曲が、ピアノ学習者の目標になっているのは素敵なことだと思います。

どうか、あなたもご自身のエリーゼを見つけて下さいませ。😄

 

お読み頂いてありがとうございます。

 

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