「エリーゼのために」難易度レベルと練習のコツ

多くのピアノ学習者が憧れる名曲「エリーゼのために」。

ピアノを習い始めて何年くらい経ったら弾けるようになるのでしょうか。

また、この曲を弾くためには、どれくらいの技術が必要なのでしょうか。

 

どうせ弾くのなら美しく弾きこなしたいもの。

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さて、どのように練習すれば美しく弾くことができるでしょうか。

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「エリーゼのために」の難易度はどれくらい?

グランドピアノのある部屋

ブルグミュラー後半〜ソナチネレベルの技量が必要

「エリーゼのために」は、果たしてどれくらい難しい曲なのでしょうか。

この曲ほど、難易度について意見の分かれる曲はないかもしれません。

 

Yahoo!知恵袋などを読みますと、

「誰でも弾ける小曲」「ウチの子は小1で弾きました」「2年生なら楽勝」「このレベルの曲で苦労しているようでは‥」

などといった辛口意見から、

「かなりの技術がないと難しい曲」「人前で弾くのは勇気が要ります」「美しく弾くのは大変です」

というような慎重な意見まで実に様々。

 

私は慎重派です。

「エリーゼのために」をある程度きちんと弾くためには、ブルグミュラー終盤からソナチネを弾きこなすくらいの技術が必要と考えています。

いわゆる「初中級の終わり頃〜中級レベル」と捉えて頂くとわかりやすいでしょうか。

ブルグミュラー「貴婦人の乗馬」、湯山昭「バウムクーヘン」より確実に難しいです。

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このように考える先生方は比較的多く、ピアノ曲の難易度を27段階にレベル分けした「ピティナ・ピアノ曲辞典」では、「エリーゼのために」の原曲は「応用6」となっています。

ピティナ・ピアノ曲辞典「エリーゼのために」

「応用6」とは、平吉毅州の「真夜中の火祭」と同程度。かなりの技術が必要とされています。

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逆に、「『エリーゼ』は小学校低学年で卒業」と割り切るタイプの先生方もいらっしゃいます。

人により考え方は様々ですが、楽曲を年齢で区切ってレベル分けするのは個人的にやや違和感を覚えるところです。

美しく弾くなら高い技術が必要

なぜ、これほどまでに難易度に対する意見が分かれるのでしょうか。

おそらく、何回か繰り返されるおなじみのメロディ部分は比較的平易で、いわゆるバイエル終盤程度の力で弾くことができるためではないかと思います。

 

ただ、この曲の最も難しい部分はそこではありません。

特に難しいのは中盤のヘ長調のパートです。

ここでは、重音を含む左手の伴奏型を確実に弾きつつ、装飾音符のついた右手のメロディを柔らかく歌うように。

さらに32音符の早いパッセージを軽やかに弾かねばなりません。

 

 

また、終盤のイ短調の部分は左手の同音の連続打鍵が難しいです。

右手も音数が多く、手が小さかったりするとかなり大変です。

さらに、ダンパーペダルを複雑に駆使して音が濁らないように効果的に使う必要があります。

 

以上のことから、私は、この曲を芸術的に美しく弾くには、ベートーヴェンの初期のソナタが弾けるくらいの力が欲しいと考えています。

「エリーゼのために」を弾けるようになる年齢は?

この曲は、ある程度の手の大きさが求められます。

オクターブの跳躍があちこちにありますし、32、34小節の32分音符による高速のパッセージにもオクターブが出てきます。

また後半、62小節の減7和音(ミソシ♭ド♯)や64小節の和音(ソ♯レファ)、66、68小節の6度重音でのメロディ奏も手が小さいと困難です。

 

さらに、数多くのダンパーペダルを踏まないと曲になりません。

足台を使ってペダルを踏むのは小柄な子にはやはりなかなか大変ですし、この曲のペダリングはかなり難しい。

直接ペダルを操作できる体格になっていた方が安心です。

 

以上の理由から、よほど大柄で手の大きなお子さん以外は、小学校高学年になってから挑戦した方が曲を楽しめると思います。

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練習する時の注意点

グランドピアノの鍵盤

曲の構成

この曲は、ABACAの5つのパートからなる小ロンド形式でできています。

A:冒頭の有名なメロディ(比較的平易)

B:24小節から始まる軽快なヘ長調の部分(難)

A:

C:61小説からのドラマチックな部分(やや難)

A:

コーダ(終結部)などは特になく、シンプルな構成になっています。

 

つまり、難しいB、C部分を中心に練習すべきということですね。

Aは難しくありませんし、何度も出てきますので放っておいても上手に弾けるようになるでしょう。

くれぐれも、頭から通して何回も弾くような非効率な練習は避けたいものです。

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8分の3拍子

この曲は、8分音符を1拍として数える8分の3拍子で書かれています。

ワルツなどによく見られる4分の3拍子ではないのがミソ。

ズンチャッチャ、ではないのですね。

 

8分の3拍子は、1小節を1拍と捉えながら弾くことが求められます。

①、2、3、①、2、3、ではなく①23、①23、と横のラインを意識するようになめらかに流れるように弾けると良いですね。

アウフタクト(弱起)

冒頭の有名なメロディは、実はかなりの曲者です。

この曲は3拍目からのアウフタクト(弱起・曲が1拍目以外から始まること)で始まっているのですが、左手に音がないためにアウフタクトに聴こえにくいのです。

実際には上のように書かれているのですが、耳で聴くと圧倒的に

ミレ♯ミレ♯ミシレド│ラ ドミラシ〜

のように冒頭だけが4拍子に聴こえることが多いのです。

 

拍感の曖昧さとでもいいましょうか、この独特の浮遊感は曲の魅力のひとつでもあります。

ですが、それを理解しながら弾いているのか、なんとなく聴こえたように弾いてしまっているのかは大きく違います。

練習する時はぜひアウフタクトを意識して、常に拍を心の中で感じながらおさらいしてみて下さい。

中間部(B)の注意点

曲中で唯一、ほのかな明るさの見えるBパート。

突然元気になりすぎないよう気を付けたいものです。

24小節2拍目ウラからの3つの和音の弾き方は難しいですね。

3拍目ウラでは6つの音を同時に鳴らすことになりますが、あくまで軽やかに弾きたいもの。

 

Bパートでもっと難しいのは左手かもしれません。

特に27小節目、542指でファソシ♭を同時に抑えながら音量をコントロールするのは大変です。

ガチャガチャしがちなのでご自身の音をよく聴きながら練習してみて下さい。

 

30小節3拍目、レ音がオクターブで出てきます。

手が小さければどちらかの音をカットする必要がありますが、どちらにしても音の絶妙なバランスが崩れてしまいます。

あえて選ぶなら下のレでしょうか。

テクニックがあればタイミングをずらして両方弾くのが良いと思います。

後半(C)の注意点

ドラマチックに盛り上がるCパート。

左手の同音連打は321321‥と指を替えて弾くよう指示がありますが、これはなかなか至難。

右手の重音も難しいので、音の粒が揃わなくなりがちです。

ここはあえて、3などの比較的よく動く指の1本指打法で良いのではないかと思います。

別にベートーヴェン氏が指遣いを指示しているわけではありませんしね。

 

79小節目からのの高速3連譜のアルペジオ。

これを元気いっぱいに大音響で弾いている方をよく見かけますが、どの版でも強弱記号はfとはなっていないはずであります。

あくまで繊細に、流れるように弾いて頂けたらと思います。

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「エリーゼのために」の難易度・まとめ

五線紙の上の花

 

我が国では、「エリーゼのために」は小学生(主に女子)が発表会で弾くのが定番となっています。

が、ベートーヴェンは、子ども向きの曲として作曲したわけではありません。

この曲は、彼が40歳の時の作品です。

作曲家として最も充実していた時期で、多くの優れた作品を世に送り出しています。

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「エリーゼのために」の難易度については色々な考え方がありますが、私を含む少なからぬ先生方の見解は以下のとおりです。


・そこそこ難しい曲。ソナチネレベル(中級レベル)の技量が必要

・人前で弾くにはかなり注意深く練習する必要あり

・ダンパーペダルを複雑かつ頻繁に使う必要があるので、足台を使わなくなってからの方が無難

・ロマン派の様式で作曲されており、さらに恋愛感情などが反映されているフシがあるので精神年齢の低い子には向かない


 

いかがでしょう。

思ったよりもハードルが高いと思われたのではないでしょうか。

 

「‥そんなの別に気にしなくてもいいんじゃないのかなあ。

友達は2年生くらいで弾いてたし、とりあえずペダルいっぱい踏んでそれらしく弾ければいいよ」

という考えの方がいても不思議ではありませんし、間違った考えというわけでもありません。

 

また、無理を承知で弾いてみたい、ヘタでもいいから次の発表会でどうしても弾きたい!

という意思を持った学習者の方がこの曲に挑戦し、仮に上手くいかなかったとしても、それは決してムダな努力ではありません。

努力は経験として残りますし、また別の機会に再挑戦するのもアリです。

 

もしもあなたがこの曲を発表会などで演奏したいと思われるなら、ぜひともこれらのことを念頭に置きつつ先生にご相談してみて下さい。

あなたのご希望がとおって、この美しい曲に挑戦する機会が与えられることを祈っています。

お読み頂いてありがとうございます。

 

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