「チューリップのラインダンス」を解説!難易度と弾き方のコツ|何年生で弾くのがおすすめ?
「チューリップのラインダンス」は、平吉毅州(ひらよし・たけくに,1936-1998)による子供のためのピアノ曲。
1979年発行の「こどものためのピアノ曲集『虹のリズム』」に収録されています。
イメージのわきやすいタイトルとチューリップの花にふさわしいで可愛らしさで小学生に大人気のこの曲、今日では発表会やコンクールの定番となりました。
ただし、愛らしいイメージとは裏腹に、意表を突く和音、独特のリズム、広い音域など、手強い要素もいっぱい。
より魅力的に演奏するにはどうしたら良いでしょうか?
本記事がご参考になれば幸いです!
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目次
「チューリップのラインダンス」はこんな曲
- 作曲者:平吉毅州
- 調性:ト長調
- 小節数:79小節(4〜5頁)
- 演奏時間:約1分30秒〜2分程度
- 収録曲集:こどものためのピアノ曲集『虹のリズム』(カワイ出版)
元気で明るく弾むような旋律と、起承転結のストーリー性を持つ軽快な曲。
和声とリズムにジャズやポピュラーの要素を持ち、現代の子供たちにアピールする要素がいっぱいです。
「チューリップのラインダンス」というユーモラスな題名も、良い意味でマンガ・アニメっぽく、今から40年以上も前にこの曲を発表した平吉の先見の明に驚かされます。
楽譜は2種類販売されていますが、平吉毅州の他の作品にも触れてみたいなら「虹のリズム」がおすすめ。↓
「先生が選んだピアノ発表会名曲集 ④ 」にも収録されています。↓
「チューリップのラインダンス」のみを購入したい場合はこちらから↓
「チューリップのラインダンス」の難易度
難易度
「チューリップのラインダンス」の難易度は初級の終わりから中級の入り口にかけて。
「初中級」レベルであるといえます。
「先生が選んだピアノ発表会名曲集④(ソナチネアルバム程度)」に収録されていることから分かるように、ソナチネに入っていれば安心。
ブルブミュラーなら25練習曲の後半なら発表会でも問題なく演奏できるでしょう。
曲を27段階の難易度にレベル分けした「ピティナ・ピアノ曲辞典」では、ちょうど真ん中あたりの「応用5〜7」と定義されています。
何年生で弾くと良い?
さてこの「チューリップのラインダンス」。
発表会でも聴き映えすること間違いなしの名曲ですが、ひとつだけ難点ともいえない難点?があるのです。
それは、タイトルから受ける可愛いらしいイメージと曲の難易度がいまひとつ合わないこと。
実は以前保護者からのクレームもどきを受けたことがあるのです(><)↓
あれは確かまだこの曲集「虹のリズム」が世に出て10年程度しか経っていなかったころ。
発表会で、当時小学校3年生の生徒に頑張って弾いてもらいました。
その子の技量を考えるとかなりの冒険でしたが、雰囲気にぴったりだしイケる!と判断したのです。
曲出ししてまもなく、迎えに来た保護者(お母さん)から「先生〜、『チューリップのラインダンス』なんてえ、ウチの子幼稚園児じゃないんですけどぉ〜。」と半分笑いながら言われてしまったのでした。( ´Д`)。。
目は笑っていなかったのでちょっとコワかったです(笑)。
このように、ピアノ曲について詳しくない人には「チューリップのラインダンス」は「幼稚な曲」と思われる危険性があるということ。
そんなわけで本来なら高学年が弾いてもおかしくないくらい難しい曲なのですが、実際は低学年で弾くのが主流となっているようです。
ただ、第3音を含む長7度(ドミシ)の和音や左手に黒鍵を含む短7度の和音(ファミ♭)が出てきたりするので物理的に手の小さい子には厳しいです。
個人的に、発表会なら3年生から5年生くらいまでの年齢の子に弾かせたい曲です。
「チューリップのラインダンス」の演奏のコツ
様々なキャラクターを持つたくさんのチューリップが、舞台上でラインダンスを披露します。
巧みなフォーメーション(隊列)で前後左右入れ替わりながら踊る、色鮮やかなチューリップたちのストーリーを考えてみましょう。
テンポが速すぎるとせわしない印象になるので、最大限♩(4分音符)=200を超えない速さがおすすめです。
イントロダクション
アウフタクト(弱起)2拍+7小節。
舞台の幕が開くところでしょうか。段々と音が増えていったかと思うと、3小節目のffで強烈な不協和音が。
根音(ルート音・ラ♭)の増4度にあたる「レ」が印象的。ジャズでいうところの+11thです。
長目のフェルマータ でじっくり聴かせましょう。
続く左手がラインダンス開始の合図です。2拍目の4分休符がなくなってしまわないように。
上手に踊るには曲の速さが一定でなければなりませんよね。あくまで正確にテンポを刻んでいくようにしましょう。
8〜18小節目
8〜9小節目の下降する4分音符と、10〜11小節目の8分音符と続くシンコペーション。
この二つのモチーフ(動機)が曲のテーマを形作っています。
4分音符は明るく弾むように、続く8分音符はやや抑えめの音で控えめに弾くとキャラクターの違いが表現できます。
シンコペーションの♪♩♪と、その後の2分休符はこの曲の生命線。
花の曲なので、スタッカートはあまり鋭くならないように弾くのがおすすめ。
19〜31小節目
19〜23小節目はひとつの聴かせどころ。
難しい箇所ですが余裕を持って弾けるとカッコよいですね。
23小節目の8分休符をよく感じて。多少長めでもOK。(^_−)−☆
24小節目、テーマ①が1オクターブ下がり、ドラマチックに盛り上がったあと、曲調がやや暗く変化していきます。
27、28、29小節目の左手「シ」音のタイが短くならないように。29小節目の左手の8分音符はモチーフ②を使っています。
舞台が暗転したようですね。何が起こるのかな?
32〜39小節目
平行調のホ短調に移調。ちょっと暗めの色調で、チューリップたちの演技に変化がつけられているようです。
右手のヘ音記号からテーマが展開されますが、モチーフ①と②の順番が入れ替わっています。
抑えた音量で、クリアすぎない音色で弾けるとぴったり。
40〜50小節目
左手でモチーフ②を繰り返し、もう一度ホ短調を確認したあと、この曲最大の山場に向かいます。
頻出する付点4分音符と8分音符はイントロで使われたリズムです。
44小節目以降、このリズムのタイミングを縮めて切迫感を表現。
46、47小節目にかけては3/4の拍子感で、と作曲者の指示があります。
1、2、3、と数えながら練習してみると良いと思います。
ffで演奏される不協和音はまたしてもジャズの響き。
腕の重みを乗せて、ドラマチックに弾き切って下さい。
左手の長い「レファ♯ラ」の上で右手の8分音符が軽やかに舞い、テーマに戻ります。
51〜66小節目
テーマはmpで。賑やかになりすぎない方がオシャレ。
左手が右手のテーマを追いかけるのをよく聴きながら弾くと良いです。
59小節目でようやくもとの元気の良さが戻ってきますね。
63〜66小節目、左手の短7度〜長7度の音程が手の小さい子にはやや困難。
右手もやや複雑なスケールで盛り上げていきます。
67〜79小節目
華やかなコーダ(終結部)。
右手は付点のリズムと全音符、左手でモチーフ①を繰り返し、終幕に向かいます。
左手で刻む4分音符が、今度は倍のタイミングに伸びて右手に引き継がれ、またしても意表を突く和音でのフェルマータが。
ここはあまり長すぎない方が可愛らしさが出ます。
76〜78小節目の右手はイントロで使用されたものと同じ。
左手の低音でテーマをひそやかに繰り返し、主音の「ソ」をそっと鳴らして舞台は終わり。
ライトが落とされ、あたりに静けさが漂うところまでが曲の一部です。
最後の4分休符に付けられたフェルマータをよく感じながら曲を締めくくって下さい。
まとめ
平吉毅州作曲「チューリップのラインダンス」の難易度レベルと演奏のコツについてお伝えしました。
軽快で明るく、楽しい曲ですが、あまりにも元気いっぱいに弾くとちょっとイメージとズレてくるように思います。
あくまでもお花の曲なので、可愛らしさとともに軽やかさと、どこかふわっとした柔らかさが感じられると素敵です。
それとともに、ところどころに感じられるjazzyな響き。
学年の高い子が弾くなら、ちょっとオシャレに小粋なイメージで弾くのも良いかも。
無理に盛り上げようとしなくても、何しろ曲そのものの完成度が高いので、楽譜の指示に従って素直に弾いてみて下さい。
「チューリップのラインダンス」の演奏が、あなただけの素敵な舞台になることを祈っています。
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