ショパン伝記 小学生向き2冊の特徴を徹底比較|おすすめの子のタイプは?選択のポイント
近年、小学生のうちからショパンの名曲に挑戦する子供が増えています。
遺作のワルツやノクターンはもちろん、今や小学生で「華麗なる大円舞曲」や「幻想即興曲」を演奏する子は珍しい存在ではありません。
ショパンが「なかなか手の届かない遠い目標」だった時代は終わりました。
さて、そんな小さなピアニストたちにとって大切なのは、ショパンという作曲家についての知識を得ること。
作品についてだけでなく、彼の生きた時代背景や好んだ演奏スタイルなどを学んでおくことは、より良い演奏のために役立つはずです。
本記事では、特に小学生向きに書かれた2冊のショパンの伝記を徹底比較。
それぞれの特徴とおすすめしたい子供のタイプ、迷った時のチェックポイントなどをまとめてみました。
発表会やコンクールで初めてショパンの曲に挑戦することになった、あなたのお子さんの参考になれば幸いです。
ショパンの生涯と年表、代表曲一覧はこちらの記事からどうぞ↓
ショパンの有名ピアノ曲作品10選|曲の難易度と背景/特徴・演奏上の注意点を年代順に解説!
目次
ショパン伝記 小学生向き2冊の比較
数あるショパンの伝記の中で、特に小学生向きとうたって書かれているのは以下の2冊です。
- 「CD付き音楽家ものがたり ショパン」新井鷗子(あらい・おーこ)著:音楽之友社
- 「はじめに読む1冊 ショパン」ひのまどか著:YAMAHA
2冊を比較すると次のようになります。
「音楽家ものがたり ショパン」 | 「はじめに読む1冊 ショパン」 | |
値段(税込み) | 2,420円 | 1,760円 |
ページ数 | 112ページ | 311ページ |
対象年齢 | 小学校中学年・高学年向き | 10歳以上 |
音源 | CD付き | QRコードにアクセスして試聴 |
イラスト | あり | なし |
写真資料 | 少ない | 豊富 |
情報網羅度 | ざっくり | 詳しい |
この2冊、ともに「小学生向きのショパンの伝記」をうたっているのですが、その内容や想定読者層がまったく違います。
ここで選択を間違えると、せっかくの良い本があんまり役に立たないなんてことにもなりかねません。
以下、2冊の特徴とおすすめポイントを詳しくお伝えして参ります。
小学生向きショパン伝記「CD付き 音楽家ものがたり ショパン」
特徴
「CD付き音楽家ものがたり ショパン」(新井鷗子著・音楽之友社)の特徴は以下の通りです。
- 小学生向きに特化
- 大きな文字と「ですます調」の易しい文章
- マンガ的なイラスト
- 小学生読者にふさわしいエピソードのみを記載
- 「ピアノの詩人」としてのショパン像を強調
「音楽家ものがたり ショパン」は、とても読みやすい本です。
文字が大きく、ほとんどの漢字にルビがふってあるので、読書好きな子なら小学校低学年でも読めます。
イラストはパステル調で少女マンガのノリ。繊細な王子様系イケメンだったショパンの特徴や貴族的な雰囲気をよく伝えています。
ショパンについて学ぶとき、どうしても恋人だったジョルジュ・サンドにふれないわけにはいきません。
そしてこの結婚外の大人の男女関係を、どこまで子供に伝えるかは悩みどころ。
本書では、サンドとの友好的で家族的な関係を主に記述し、2人の別離の原因になるいさかいについては多くを費やしません。
あくまでも、「小学生に安心して読ませること」を主眼にして書かれています。
同じように、当時のヨーロッパの情勢や政治的な動き、ショパンの強い愛国心や闘争心などについての記述も目立ちません。
ロシア大使館への出頭を拒否して亡命者になったくだりも、軽く流す程度。
「ピアノは歌う ぼくの心を」というサブタイトルが示す通り、「ピアノの詩人」としてのショパンに重点をおいた伝記となっています。
こんな子におすすめ
「音楽家ものがたり ショパン」は、こんなお子さんに特におすすめです。
- 小学校全学年の児童
- 初めてショパンの曲に挑戦するピアノ学習者
- ショパンについて短時間で学びたい
- ショパンの名曲をじっくりCDで聴いてみたい
- 有名曲の解説も読みたい
本書の対象年齢は小学校中学年・高学年向きとなっています。
が、ほとんどの漢字にルビがふってあるので小学生になっていれば無理なく読めそう。
読むのに時間がかからないので、ピアノや塾、その他の習い事にと忙しく、読書の時間を多く取れないお子さんには特におすすめです。
文章も易しく、まるで学習マンガのようにすんなりと内容が頭に入ってくることでしょう。
一押しポイント
「音楽家ものがたり ショパン」の1番のおすすめポイントは、なんといっても充実したCD音源が付いていること。
ショパンコンクールで1位を獲得したピアニストや日本の人気ピアニストによる本格的な音楽CDで、13曲もの名曲が収録されています。
「CD付き音楽家ものがたり ショパン」収録曲と演奏者一覧は以下の通り。
- ノクターン第2番/ユンディ・リ
- 前奏曲第15番「雨だれ」/ユンディ・リ
- 練習曲第12番「革命」/ウラディーミル・アシュケナージ
- ポロネーズ第6番「英雄」/マルタ・アルゲリッチ
- ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」/スタニスラフ・ブーニン(ライブ音源)
- ワルツ第6番「小犬のワルツ」/牛田智大
- マズルカ第25番/ジャン=マルク・ルイサダ
- ピアノ協奏曲第1番 第1楽章より/チョ・ソンジン/指揮:ジャナンドレア・ノセダ/ロンドン交響楽団(1楽章途中まで)
- ピアノ協奏曲第2番 第2楽章/ラハウ・ブレハッチ/指揮:イェジー・セムコフ/ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
- チェロ・ソナタ第3楽章/チェロ:ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ/ピアノ:アルゲリッチ
- 練習曲第3番「別れの曲」/ウラディーミル・アシュケナージ
- バラード第1番/松田華音
- ワルツ第9番「別れのワルツ」/アリス=沙良・オット
なんとも錚々たるメンバーではありませんか!
これだけの充実した音源と、さらに本書にはその詳しい解説も付いているのは特筆すべき。
ピアノを習うすべての子供たちに自信を持っておすすめできる内容です。
マイナスポイント
- ショパンの伝記としてはやや大雑把
- 小学校高学年の子には少し物足りないかも
「音楽家ものがたり ショパン」は、短時間でショパンの全体像を把握するにはとても良い教材。
ただ複雑な人間関係や時代背景の記述を最小限に抑えているので、伝記としてはやや大雑把すぎるきらいはあります。
高学年でショパンの曲に挑戦しようとするような子には、読み物としてはちょっと物足りないかもしれません。
あくまでも「音源付きショパンの入門書」ととらえるのがちょうど良い利用法といえそうです。
小学生向きショパン伝記 「はじめに読む1冊 ショパン」
特徴
「はじめに読む1冊 ショパン」(ひのまどか著・YAMAHA)の特徴は以下の通りです。
- 小学校高学年〜一般向き
- 「〜である」調の格調高い文章
- イラストなし。著者撮影のものも含む写真資料が豊富
- ショパンの人間関係、当時のヨーロッパ情勢などを余すところなく記述
- 「音楽で戦う革命家」としてのショパン像を強調
「はじめに読む1冊 ショパン」は、大人の読書に耐える重厚で骨太な作品です。
難しい漢字にはルビがふってありますが、ボキャブラリーが高度でページ数も多いため、読むのにそれなりに時間がかかります。
本書はショパンの生涯を、綿密な取材をもとに史実にのっとって詳しく伝えています。
当然サンドとの関係の発端とその変化、やがて破局へと至る道筋もしっかりと記述が。
また、当時の不安定な世界情勢に振り回されるポーランド人としてのショパンの苦悩にも多くページを割いています。
帯に「祖国への思いを胸に、音楽で戦った革命家」とあるように、戦う闘士としてのショパンに力点をおいた伝記となっています。
こんな子におすすめ
「初めに読む1冊 ショパン」は、こんなお子さんにおすすめです。
- 小学校高学年以上でやや早熟な読書好き
- ショパンについてじっくりと詳しく学びたい
- 将来ショパンの難曲を弾いてみたい
- ショパンの作品に込められた力強さや激しさをピアノで表現したい
- 偉人の伝記が好き
本書は小学生が読むにはちょっと大変ですが、特別に本好きな子なら話は別。
少々難しい言葉や言い回しなどものともせずに読みこなす子にはおすすめできます。
また真剣にピアノを習っていて、いずれ「革命のエチュード」や「英雄ポロネーズ」などを弾いてみたい子、ロマンチックなだけではないショパンを表現したい子にはぜひこちらを。
ショパンに限らず、様々なジャンルの偉人の伝記が好きな子にもおすすめです。
マイナスポイント
- 小学校中学年以下の子には難しい
- 音源が試聴のみ
- イラストがないので紙面に文字が並び、小学生向きとしては硬い印象
本書の対象年齢は「10歳以上」となっていますが、平均的な10歳の小学生が読むのには適していません。
小学校高学年以上の読書好きな子供のための、硬派な伝記本という感じです。
演奏音源はQRコードからアクセスして聴くことができますが、あくまで「試聴」ですので途中まで。
また写真は豊富ですが、すべて資料としてのものでイラストはなし。活字がずらっと並んでいて、やや堅苦しい印象なのは否めません。
じっくりと時間をかけて読むのがおすすめです。
ショパン伝記 選択のポイント
さて、「ウチの子は小学校5年生。今度ショパンを弾くことになったので伝記を探しているんだけど、どっちを買ったらいいかしら?」と迷っているあなたへ。
お子さんについて、以下の項目のうち当てはまるものをチェックしてみて下さい。
- じっくり読書するのが好き
- 塾や習い事で忙しく、なかなか読書の時間がとれない
- 年齢より大人びているタイプ
- 年齢相応のタイプ
- 辞書や辞典などを読むのが好き
- 音楽を聴くのが好き
- 将来を見据え、真剣にピアノを習っている
- お稽古ごとのひとつとしてピアノを習っている
- ショパンの難しい曲に挑戦したい・またはすでに挑戦している
- ショパンの曲を弾くのは初めて
いかがでしたか?
上のチェックポイントのうち、偶数の項目が多く当てはまるお子さんならば「音楽家ものがたり ショパン」がおすすめ。
奇数の項目が多く当てはまるお子さんならば「はじめに読む1冊 ショパン」でも大丈夫でしょう。
学習マンガもおすすめです。各社比較記事はこちら↓
学習マンガ「ショパン」各社版を現役ピアノ講師が徹底比較!おすすめはどれ?感想と口コミ評判
まとめ
「音楽家ものがたり ショパン」「はじめに読む1冊 ショパン」の特徴をまとめると以下のようになります。
- 共に小学生向きのショパンの伝記として発売されている
- 「音楽家ものがたり」は易しい文章で文字が大きく読みやすい。小学校全年向き
- 「音楽家ものがたり」のCD音源はショパンコンクールで1位を獲得したピアニストなどの演奏による本格的なもの
- 「音楽家ものがたり」のマイナスポイントは、伝記としてはやや大雑把で高学年の子には物足りないかも?
- 「はじめに読む1冊」は格調高い文章で大人の読書に耐える。小学校高学年から一般向き
- 「はじめに読む1冊」の音源はQRコードからの試聴のみ。あくまで硬派な伝記としての書籍
- 「はじめに読む1冊」のマイナスポイントは、やや内容が細かく小学生向きとしては難しい
こうしてみるとやはりこの2冊、同じ「小学生向きのショパンの伝記」というくくりではありますが、内容はまったく違うという結論に。
一番良いのは両方購入して、「音楽家ものがたり」は音源資料として、「はじめに読む1冊」で作品の背景を調べる、として使うことかもしれませんね(^○^)
ショパンの曲はどれも難しいので、小学生で弾けることは、実はすごいことなのです。
たとえ遺作の小さなワルツであっても、ショパンの音楽は詩情に満ちて美しく、どこか悲しげな大人の響きを感じるはず。
その秘密を探るためには、やはりショパンの生涯を記した伝記を読んで学ぶのが一番。
小さなピアニストたちのレパートリーのために、本記事がお役に立てればこんな嬉しいことはありません。
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