ピアノの初級者〜初中級者の練習のコツ
本記事では、ピアノを習い始めて数年がたち、初級レベルを脱しつつある方に向けて練習や演奏のコツを書いていきます。
目次
ピアノの初中級ってどれくらいのレベル?
前回の「初心者〜初級者の練習のコツ」では、私の教室では「初級者」をざっくりと
・いわゆる「青(黄色のケースもあり)バイエル」程度、または
・「ぴあのどりーむ」3巻終了〜6巻終了程度
・トンプソン 現代ピアノ教本①程度
と捉えていると書きました。
同じような分け方をすると、初中級とは
・本格的にハノンなどの指の訓練開始
・練習教材として「ツェルニー100番」、「ピアノの練習ABC(ル・クーペOp.17『 L’ABC』)など
・副教材としてブルグミュラー 25の練習曲、シューマンやチャイコフスキーの易しい小品
と考えるとわかりやすいかと思います。
上記はあくまで私の中での捉え方であり、色々な考え方があると思いますが、一般的にはかなり弾ける曲が増えて、ピアノを習う楽しみが増える時期と言えます。
発表会でも聞き映えのする曲が選べるようになり、教える側としても一安心といったところです。
以下、これから先、さらに弾く楽しみを存分に味わえるようになるべく、この時期にぜひ身につけておくと良い習慣を、多くの生徒さんに人気のブルグミュラーを例に書いていきます。
ブルグミュラー25番練習曲を例に
ブルグミュラー25の練習曲(以下「ブルグミュラー」と表記)は、実に優れた曲集です。
「練習曲」と銘打ってありますが、副教材の曲集として使用される先生方が多いようです。
1番から25番までほぼ難易度の低いものから高いものへと順に並んでいて使いやすく、生徒さんにとってイメージのわきやすい表題が付いています。
また一曲一曲の内容も、「素直な心」や「牧歌」など具体的でわかりやすいものから、「お別れ」や「慰め」などの心情を描いたものを経て、「アヴェ・マリア」「舟歌」などのやや抽象的なものへと移り変わっていきます。
特に私の教室では、小学校の中学年あたりで弾くことになる生徒さんが多く、ちょうど彼ら彼女らの心の成長に合わせて曲の内容も徐々に深みを増しているかのようなこの曲集は手放せません。
というわけで、多くのお教室でも取り上げられているこの曲集を例にとり、どうすればこれらの曲を魅力的に演奏できるようになるのか、そのコツをここで書いてまいります。
なお、ここでは
・音楽之友社 ブルグミュラー25の練習曲 New Edition (江崎光代・春畑セロリ解説)
・全音楽譜出版社 新こどものブルグミュラー 25の練習曲(松本倫子編・音葉みみこ解説)
を例にとって説明していきます。
まずは楽譜をよく見て正確に再現しよう
このくらいのレベルになってくると、楽譜には音符や休符、強弱記号のほか、様々な音楽用語やアーティキュレーション(音の区切り方やつなぎ方などの記号。スラーやスタッカートなど)がかなり細かく書いてあります。
まずは、それらを正確に譜面から読み取り、鍵盤上で正確に再現していくことを心がけましょう。
使っている楽譜にもよりますが、例えば1番の「素直な心」では、両社版ともに P (弱音記号)、dolce で始まり、2小節目にディクレシェンドが書いてあります。
曲が始まったばかりで見落としやすいですが、1小節目の「ソミレド ソミレド」からの1オクターブ上への跳躍のため、急に音量が出てしまいがちです。
dolce(やわらかく、甘美に)という指示ですので、ここで急に元気になるのは気になります。
また13小節目は、これも両社とも右手の中声部の音の流れ(8部休符・ミ♭レド)にしたがってディクレシェンドが二つ並んでいます。
右手が2声な上、14小節目のスフォルツァンドに向かって曲が盛り上がっていくためにどうしてもディクレシェンドになりにくい箇所ですが、こういった細かいところをきちんと表現できているかどうかで聴いた時の印象がまったく違ってきます。
この調子で、かなり細かく様々な指示がありますので、それらを一つ一つ意識するだけで練習のし甲斐があり、また効果も大きいのです。
テンポを上げてバリバリ弾くよりもよほど適切な練習となるはずです。
ぜひ「まずはできる限り譜面の通りに弾く・スラーの切れ目やアーティキュレーションに意識を向ける」ことを徹底してみてください。
曲から物語を考えてみよう
さらに魅力的な演奏にするためにはどうすれば良いでしょうか。
この曲集は多くの学習者が学ぶため、様々な出版社が工夫を凝らした楽譜を出しています。
私は上記の2冊のどちらかをお勧めしています。どちらも解説が詳しく、小学生にも理解できるように編集されているからです。
そして、両方ともに「情景を想像してみよう」「イメージしてみよう」と繰り返し書いてあります。
譜読みが終わったら、一つ一つの曲について想像をふくらませ、情景をイメージするだけでなく短い物語を考えてみてはどうでしょうか。
例えば7番「清い流れ」では、はじめ穏やかだった水の流れが、9小節目以降少し様子が変わり、細かい音型によって清流が岩にぶつかって沸き立つような動きが表現された後、ダ・カーポで最初に戻り、穏やかな流れのまま曲を終えます。
ある程度弾けてきた生徒さんには、「ボートに乗って川下りをしていると思ってごらん」と伝えます。
その言葉がけで、まるで自分が短い物語の主人公のような視点を持つことができて、演奏が急に生き生きとしたものに変わることが多いです。
穏やかな流れを快適に進むボートが、途中から急流にのまれ、翻弄されるもまたもとの穏やかさに戻って旅を終えるかのような、具体的なイメージをつかむことができるのです。
他の曲でもこの方法は有効です。優雅な曲、激しい曲、たくさんの自由な物語を形作ることができます。
特に最終曲の「貴婦人の乗馬」などはイメージしやすく、物語も想像しやすいのではないでしょうか。
ブルグミュラーはロマン派に属する作曲家ですので、テンポなどかなり揺らしても(速さを適宜変えながら弾くこと)不自然にはなりません。
やりすぎは禁物ですが、単に楽譜通りに弾くことを卒業した方はトライしてみてはいかがでしょうか。
お手本通りの演奏とはまた違った、新たなこの曲集の魅力を発見できます。
ぜひブルグミュラー以外の曲でも試してみてください。
お読み頂いてありがとうございます。