ピアノ演奏時の脱力について

あなたはピアノを弾く時に、腕や手首が痛くなることはありますか?

よく、「ピアノを弾く時は脱力が大切」と言われます。

それでいながら、なかなか実感するのが難しいのが「脱力してピアノを弾くこと」でもあります。

 

脱力とは、腕や手首に余分な力が入らないように体の力を抜くことですが、一方で力を抜きすぎると良い音が出なくなります。

どうすれば脱力しながらも音をコントロールする感覚を身につけることができるでしょうか。

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ピアノを弾く時に脱力できていないと何が困るのか

ピアノの鍵盤と楽譜

脱力できていないと何が困るのでしょうか。

一番困るのは、手首や腕が痛くなることです。

練習曲などを弾いているとすぐにだるさを感じて長く練習できません。

同じところを何度も練習する必要のある難しい箇所でよくおこります。

肩がこったり、首回りが痛くなる方も多いです。

大人はもちろん、最近は小学生でも肩こりを訴えるお子さんもいます。ピアノばかりが原因ではないケースもありますが‥

 

さらに、余分な力が入ったまま長時間練習することにより、腱鞘炎などの本格的なケガに至ることもあり得ることです。

ちなみに私は、腱鞘炎にはかなり悩まされました。

いずれ体験談としてまとめたいと思います。

 

また、手首が固いままでは音の出し方をコントロールできません。

特に、離健(りけん・鍵盤から指が離れること)の際に音がプツッと切れて、味気ない印象の演奏になりがちです。

こちらの記事が参考になります。

「あなたのピアノには音楽性がない」と言われたら 〜音楽的に弾くための2つの処方箋〜

脱力の重要さがおわかり頂けるでしょうか。

 

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正しい脱力と間違った脱力

ピアノを弾く幼女の後ろ姿

ところで、当然といえば当然なのですが、常に身体の力が抜けていれば良いというものでもありません。

柔らかいもので太鼓を叩いても音がうまく鳴らないように、うまく打鍵ができなくなります。

特に腕や手首の力を抜きすぎると鍵盤が一番下まで下がらず弱々しい音になったり、逆にひっぱたくような動作になり雑音が混じったりします。

 

「姿勢」の項でも触れましたが、正しく打鍵するためには正しい姿勢は欠かせません。

足裏までしっかりと床(足台)につけた状態で、骨盤をまっすぐに立てるようにイスに座ると背筋が床と垂直になります。

鎖骨がどちらかに傾かないように床と平行であることを意識して下さい。

アゴを引いて、目線はまっすぐ前を見ます。

この時、両腕はまだ身体の横にダラリと垂れ下がっています。

この状態から、両手を鍵盤の上に「手のひらを上向きに」乗せてみて下さい。通常ピアノを弾く時とは逆の向きです。

このほうが力が抜けていることを実感しやすいからです。

 

ちゃんと力が抜けていれば、ベチャ〜のような雑音が鳴るはずです。

親指を除く8本の指は曲がって上を向いているのではないでしょうか。

これが、人間の指がリラックスしている時の自然な形です。

 

このまま、今度は両手を伏せてみて下さい。

ピアノを弾く時の正しい形とよく言われる、「卵をつかんだ時の形」になっているはずです。

これが、正しい姿勢と脱力の、一つのやり方です。

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緊張と弛緩を体感する

とはいえ、ピアノを弾きながら常にこの形を保つのは至難の技です。

特に慣れないうちは、弾いているうちにあちこちに力が入ってすぐに不自然な形になってしまうのが普通です。

そのため私の教室では、特に初心者を対象に「脱力体操」を取り入れています。

 

向かい合って立ち、まずは「気をつけ!」の声かけと共に、体に思い切り力を入れて一本の棒みたいになってもらいます。

数秒間そのままキープしたら、「はいラクに〜」と言って緊張を解きます。声までラクというかダラリとした調子で言うのがミソ。手や足腰の力を思い切り抜いてぐにゃぐにゃしたような動作をします。

これを数回繰り返します。

次に「前へならえ!」をします。やはりわざとガチガチに。

数秒キープののち「なおれ〜」で、今度は腕だけ力を抜くようにします。これも何回か繰り返します。

感覚の差が面白いらしく、特に子供達は喜んでやってくれます。可能であれば保護者の皆さんにもやって頂くとさらに喜びます。

草の上のピアノ

 

このような調子で、イスに座った姿勢で上半身だけやってみたり、腕だけでやってみたりを繰り返して、少しずつ慣らしていきます。

腕の重さを体感すべく、私の腕を持ってもらい、わざと力を抜いて見せたりなどもやってみると、その重さにびっくりするようです。

(私の腕が特別重いタイプだと言うことはないハズです。多分。)

 

こうしてひとしきり身体を動かした後でおもむろにピアノに向かうと、リラックスできていて楽しい雰囲気でレッスンに入れます。

ただ、弾いているうちに生徒さんによってはまたすぐに固くなるので、何度も声かけをしながら慣らしていきます。

 

手間はかかりますが、こうやって徐々にコツをつかんでいくと結果が良いようです。

この「脱力ごっこ」はご家庭でもできます。

時々ゲーム感覚で試してみてはいかがでしょうか。

良い感覚が得られれば幸いです。

 

お読み頂いてありがとうございます。

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